アドビが《生成AI》をクリエイターの"パートナー"と位置づける背景。「Adobe MAX 2025」で示した"新しいクリエイティブの枠組み"とは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方で、自社製品にAIを積極搭載しているアドビが提示する答えは明快だ。AIを、クリエイティブ作業全体を自動化するものではなく、“新しい作品をより効率的に生み出す手段”と位置づける。

AIは煩雑な作業を代行する。話し言葉で指示を行う手軽さと、従来の緻密なクリエイティブツールによる作業性がシームレスに結びつく環境を作ることで、プロ向けツールのジャンルにAIを定着させようとしている。

Adobeが用意した3つの”AIアシスタント”

まずウェブベースのクリエイティブツールであるAdobe ExpressにAIアシスタントを提供する。

作成してほしいイラストや画像をプロンプトで依頼するだけで、安全なクリエイティブが生成される。

「もう少しトロピカルな雰囲気に」といった主観的で曖昧な指示を出すだけで、AIがその意図を文脈的に解釈し、フォントから画像、背景色などに至るまで、デザイン全体の要素を適切に変更する。

これらの変更は非破壊的、つまり、AIが生成したデザインの特定の要素だけを後から手動で微調整することも、別のバリエーションを試すことも自由自在だ。

個人向けも、企業向けでも、成果物を得るためのもっとも手軽な入り口となることを目指している。

一方、Photoshop AIアシスタントは、プロフェッショナル向けの強力な「思考のパートナー」として設計されている。

このAIは単にPhotoshopでの作業を自動化するだけのものではない。制作中の作品に対して、ユーザー個人にパーソナライズされた提案や次のステップへの提案を行うように設計された、クリエイティブ作業のパートナーだ。

たとえば、写真のコントラスト調整やマスキングといった複雑な作業を連続で実行させるといった、まさに“アシスタント”作業を依頼したり、作業を進める上での改善案をAIから受け取り、それを参考に自分なりの判断で仕上げたりすることもできる。

Photoshop AIは「指示を愚直に実行する下僕」ではなく、「対話しながら創造を深めていく相棒」として機能する未来が見据えられている。

そして極めつきがProject Moonlightだ。この技術はまだ開発中だが、遠くない将来に提供される見込みだ。

Project Moonlightは、PhotoshopやPremiere Pro、Lightroomといった複数のAdobeアプリケーションをまたがって作業するAIエージェントだが、それだけではない。

ユーザーのInstagramアカウントなどソーシャルチャネルとも連携し、投稿履歴やパフォーマンスデータを分析し、作品がどのように見られているか?という具体的なデータをもとに成長戦略を提案してくれる。

次ページ“誰が、どのように”作り出したものか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事