アドビが《生成AI》をクリエイターの"パートナー"と位置づける背景。「Adobe MAX 2025」で示した"新しいクリエイティブの枠組み"とは?
豊富なテンプレート、直感的な操作、そして個人向けには月額1500円程度という手頃な価格。ソーシャルメディアの投稿画像、プレゼンテーション資料、イベントのポスター──「Adobeほどの機能は必要ない」多くのビジネスパーソンや個人クリエイターにとって、Canvaは手軽な選択肢だ。
2024年10月時点で、キャンバの登録ユーザー数は約2億6000万人。有料契約者数は8月時点で2700万人と発表されている。有料契約者数、売り上げ単価ともにアドビが上回るが、キャンバはプロのデザイナーによるテンプレートと生成AIの融合で新しい創作体験を提供して急伸している。
このようなサービスが広がり、「デジタルクリエイティブへのハードル」が劇的に低くなっている中で、アドビに高額なサブスクリプションを払い、複雑ツールを習得してまでサービスを使い続ける必要性が、プロクリエイター以外にあるだろうか?
クリエイター向けツールの絶対的な存在であるアドビの牙城でさえ、「デジタルクリエーションの民主化」という大きな潮流の前では危うい。好調な業績にもかかわらず株価が下落した理由は、そうした事業環境の変化に対する懸念があったからだ。
ただし、アドビも手をこまねいているわけではない。企業向けソリューションのGenStudioや個人向けで直接競合するAdobe Expressに力を入れ、また生成AIの企業向け専用生成AIを提供するFirefly Foundryという新サービスを発表している。
記事冒頭のAdobe MAX 2025では、彼らが水面下で着々と準備を進めていたことも明らかになった。
クリエイターの価値喪失を回避する
多くのプロクリエイターがAIに対して抱く潜在的な不安に「クリエイティブの価値をAIが呑み込み、自分たちの生み出す成果への価値が下がるのではないか」という懸念がある。
たとえどれほど優れた作品を生み出しても、それが学習され、自分の与かり知らぬところで誰かが自在に操っているかもしれない……。自分が生み出した作品のコントロールを失うことへの抵抗は根深い。
プロフェッショナルの領域では、ピクセル単位での調整やトーンカーブの微妙な操作こそが、作品の品質を決定づける要素となることすらあるが、AI生成の作品にはそうした魂もなく、単に“よく似た作品”が量産される可能性もある。


















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