向谷実氏の新幹線シミュレーターが凄いワケ CGではなく実写映像や音にこだわり世界へ

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 音楽館のシミュレーターは国内だけでなく、すでに海外でもマレーシアで教習用として使われており、「今では海外からの問い合わせのほうが多いですかね」。高速列車や長距離列車の教習について悩んでいる国は多いとみられ、実写映像により低コストで長距離路線を再現できる同社のシミュレーターを見て「長年の懸案をこれで乗り越えられる、と思っているみたいなんですよ」と向谷さん。

実写映像を使う独自性から「事実上、コンペティターはいない」という。リアルさを求めて開発した実写映像によるシステムが、コストなど他の面でもアドバンテージを生んだのだ。

世界の運転士を育てるシミュレーターに

可能性はさらに広がる。シミュレーターは運転操作の記録もできるため、それぞれの運転士のくせや問題点をあぶり出したり、もっとも理想的な省エネ運転を指導するプログラムをつくったりすることも可能だ。

特に海外では「運転士の技術がばらばらという悩みがあると聞く」と向谷さんはいう。シミュレーターを通じて、日本の鉄道で磨かれた「エコドライブ」の技術を輸出することもできる。

 「(撮影は)緊張の連続でつらいっすよね」と笑いながらも映像と音、そして鉄道について熱く語る向谷さんと、音楽館スタッフの手で生み出されるシミュレーター。ゲームソフトとして出発してから20年、向谷さんは「うれしいことに、いまの運転士さんたちでかなりの比率の人が(当時のソフトを)持ってるんですよ」と語る。

数多くの鉄道運転士を育てたであろう同社のシミュレーターは、これから世界各国で運転士を生み出していくことになるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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