向谷実氏の新幹線シミュレーターが凄いワケ CGではなく実写映像や音にこだわり世界へ

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「CGでの制作は大きなコストアップになる」と語る向谷実さん(撮影:梅谷秀司)

向谷さんによると、世界的に鉄道の運転シミュレーターのほとんどはCGで制作されている。CGでもリアルな映像をつくれるが、リアリティを高めようと緻密な描写をすると、その制作コストは高くなる。

このため、CGで制作する場合は走行距離を短くしたり、架空の路線を走る映像にしたりするケースが多いという。

だが、高速鉄道をシミュレーターで再現しようとする場合、走行距離が長くなるため、CGで制作すると相当なコストになる。その点、実写映像で制作する音楽館のシミュレーターでは「東京から仙台まで300km以上あっても、カメラで撮るだけなので大きなコストアップにはならない」(向谷さん)。

海外で関係者にこの話をすると「こんなケースではどうか」と数多くの相談を持ちかけられたという。その反響の多さに「うちの会社これからどうなるんだろうと思った」と向谷さんは笑う。

もともとはゲームから出発

同社が初めてシミュレーターを手がけたのは、20年前の1995年。パソコン用のゲームソフト「Train Simulator(トレインシミュレータ)」として、JR中央線のシミュレーターソフトを発売したのが最初だ。パソコンが一般家庭に普及するきっかけとなった「ウィンドウズ95」の発売や、一世を風靡した列車運転ゲーム「電車でGO!」の登場よりも早かった。

当時は「マルチメディア」といった言葉がもてはやされていた時代。向谷さんはすでに自身が参加していたバンド「カシオペア」のCD-ROMソフトを制作しており、デジタルデータの動画に可能性を感じていたという。そこで「うまく映像を撮って可変再生すれば、電車の運転ができるんじゃないか」という発想で生まれたのが、実写によるシミュレーターだ。

「『電車を運転してみたいな』という個人的な欲求」から生まれた「Train Simulator」は、まだパソコンゲームがそれほど普及していなかったにもかかわらず、第1作目から流通を手がける会社の担当者が驚くほどのヒット作に。その後、プレイステーション用ソフトにも進出し、「Train Simulator」はリアルな鉄道運転ゲームの定番となった。

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