「近くのボクシングジムに体験で行ったのですが、通うお金はとてもありません。借金を返して余裕ができたら必ず行きます、と伝えてきました。それからは日払いの派遣やキャバクラのボーイなど、アルバイトを転々としていきました」
そんなあるとき、SNS経由で大阪のバーから連絡があった。当店の面接を受けませんか、来てもらえれば1万円を渡します、という内容。興味を持って行ったが、指定の住所にバーは見当たらない。実は、ホストクラブだったのだ。
「ホストと聞いていたら行ってなかったです(苦笑)。上下関係が厳しいとか、先輩に殴られるとか、怖いイメージがあったので。半ば騙されはしたんですけど、体験で働いてみたら優しい先輩ばかりで。お金を稼ぐ選択肢もほかになかったので、やってみようかなと」
こうして25歳のとき、大和さんはホストになった。
大阪では短期間だけ働き、実家から通える京都のホストクラブに移籍。ホストで成功しないと人生が詰む、というくらいの気持ちで臨んだが、最初の数カ月は客もつかず、売り上げも立たない。一方で客との交際費など、出費ばかりかさむ。
1年で借金を完済
当時の日々を大和さんは回想する。
「閉店後にお客さんとアフターに行くとき、お金がないので駐車場に座って喋ったり、牛丼チェーン店で過ごしたりしました。今思えば申し訳なかったです。
お店から家まで徒歩40分かかるのですが、タクシー代を節約するために、よく歩いて帰っていましたね。土砂降りの中、お客さんと電話しながら歩いたこともありました」
まさにホスト版「浅草キッド」である。大和さんはお酒もあまり飲めず、場を盛り上げるのも得意ではない。ホストに求められる社交性はないタイプだと自覚していた。その代わり、客にこまめに連絡する、早めに返信するなど、できることを続けていくうちに、少しずつ売り上げが増えていった。


















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