予感していた通り、卒業後はメーカーに就職する。だが、会社員として働くことにどうしても馴染めず、すぐに退職を考えるように。そのときに、何をしたいのか、自分に問い続けた。
気づいたのは、「真剣にスポーツに向き合いたい」ということ。子どもの頃のように、プロのスポーツ選手を目指してチャレンジしたい。そうしないと後で絶対に後悔する、と強く思った。
とはいえ、サッカー選手を目指すのは現実的ではない。選んだ競技はボクシングだった。
「僕は中学生の頃から格闘技観戦がすごく好きで、ボクシングもよく見ていました。ボクシングだけで生活できるようになるのは難しいけれど、『プロになって試合をする』という目標であれば、今からでも届くのでは、と思ったんです」
事実婚の両親のもと、安定しなかった少年期
ボクシングをするので会社を辞めたい、と正直に上司に伝えたところ、驚かれながらも了承を得られた。入社9カ月目のことである。父親からは心配された。
大和さんの家庭は少々複雑である。事実婚だった両親と兄という家族に生まれたが、すぐに父と母が別居。大和さんと兄は母について、兵庫県で小学6年生まで過ごした。
中学校に上がると、大和さんは京都で父・祖父と住み始め、祖父が亡くなってからは父と2人で、大学卒業まで暮らしていたのだ。
退職時はまだ社会人1年目で、当時の生活はギリギリ。それどころか、入社に伴う引っ越しでまとまったお金が必要になり、消費者金融から借金をしていた。退職して実家に戻る際も、少なくない引っ越し費用がかかった。
そんな状況だったため、父親は理解を示しつつも心配したのだった。
結局、会社は辞めたものの、生活費を稼ぐために、大和さんを待っていたのはアルバイト漬けの日々だった。


















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