真珠湾からバグダッドへ ラムズフェルド回想録 ドナルド・ラムズフェルド著/江口泰子、月沢李歌子、島田楓子訳 ~一代記で知る米国政治の内幕

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ではラムズフェルド回顧録はどうであろうか。一般の読者が一番知りたがっているのは、なぜブッシュ政権はイラク戦争に踏み切ったかである。大量破壊兵器の存在を口実に米国はイラク侵攻を始めた。だが、イラクが大量破壊兵器を開発しているという情報は間違いであることがわかった。

では、こうした事実に著者はどう答えているのであろうか。結論から言えば、ここでも自己正当化が見られるだけである。

ただ本回顧録の面目は、シカゴの労働者階級の住む街に生まれ、軍の奨学金を得てプリンストン大学に通い、卒業後、議員のスタッフを経て1962年に下院議員に初当選、以降、ワシントンの中枢に地位を確保し続け、レーガン大統領の副大統領候補に名前が挙がるほど政界で地歩を固めてきた、保守派を代表する政治家の一代記である。

野心的な若者の立身出世の物語であると同時に、ワシントンの政治の内幕を多くの登場人物とそのエピソードで興味深く語っている。それだけ、戦後の米国政治を知るうえで欠かせない一冊になっている。

Donald Rumsfeld
1932年シカゴ生まれ。プリンストン大学卒業。予備役将校訓練生の奨学金を利用したため、卒業後は海軍パイロットに。30歳で下院議員(共和党)に初当選。4期連続当選後にニクソン政権で大統領首席補佐官。フォード政権で史上最年少国防長官などを務めた。

幻冬舎 2730円 902ページ

  

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