「AI導入→"黒字なのにリストラ"」踏み込む企業が見過ごす重大"落とし穴"

✎ 1〜 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 13
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この「黒字リストラ」(しかも大規模)は、アメリカでも顕著です。2025年1~7月の間に、アメリカを中心とするテック企業では約9万人が解雇の対象となりました。これは前年同期比で4割増という数字です。

アメリカでは、「生成AIやAIエージェントの導入」がリストラの理由としてあげられます。

ECサイト構築ツールで有名なShopifyの社長は「AIではできない理由が示されない限り、新たに採用はしない」と述べていますが、これまで機械化(RPAなど)では難しい・無理だと考えられてきたタスクが、生成AIやAIエージェントで置き換え可能になりつつある、ということでしょう。

これは「企業はもっと少ない従業員で回せるはずだ(人が多すぎる)」といった流れができつつあるのかもしれません。実際、新卒採用を控える動きも起こっており、新卒の失業率は6.6%と高い数値になっています(2025年夏時点)。

日本でも、生成AI・AIエージェントを理由としたリストラは始まっており、ダイニー社が社員の2割を削減したことは、スタートアップ界隈では話題になりました(ただし、その後、中途採用は継続している模様です)。

大企業についてはいまのところ、寡聞にして知りませんが、トレンドへの乗り遅れへの懸念・恐れといったものが、企業の「黒字リストラ」を加速させることは確実にありそうです。

筆者は、経営の手段としてのリストラに必ずしも全面反対という立場ではありませんが、そこに潜む「落とし穴」を認識していない企業が多いことに問題意識を持っています。

そして、リストラを加速させる生成AI・AIエージェントですが、じつは一方で「リストラの落とし穴」を回避する力も秘めているのです。

落とし穴は、じつは「マーケティング」にあり

リストラが、従業員エンゲージメントや採用にポジティブには働かないこと、あるいはとくにスタートアップの場合は業績への懸念を持たれる点については、改めて述べる必要もないでしょう。割り増し退職金などによる一時的な特別損失なども無視できないことは、言うまでもありません。

ただ、もっと警戒すべき「落とし穴」だと筆者が思うのは、「値上げやサービス品質の低下にも安易に手をつけるのではないか」という懸念が顧客や市場に広まることです。

次ページVMwareがBroadcomに買収された事例
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事