「顧客のところに300回行け」がビジネスに必須の深い訳【専門家が解説】

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しかし、ここで想像してみてほしいのです。

この状態の新規事業チームは、介護施設のスタッフと会話するとしても、ほとんど業界のことを知らず、たいした課題の仮説もビジネス仮説も持たない(持てない)状況で話をするのです。

もちろん1回目の会話はその程度の状態でいいわけですが、そんな浅い会話しかできないたった1回目の現場訪問で、何か深い課題への洞察が導かれる「ものすごい深い介護スタッフの悩みの本音」を引き出すことができるでしょうか。

そんなことはできるわけがないのです。

おそらく、1回目の訪問では、何を話していいか、何を聞いていいかがわからず、当たり障りのないヒアリングになってしまうでしょう。

結果、「たいした情報は得られない」わけです。チームは落胆するかもしれませんが、じつは、新規事業開発の初陣としては、別に「それでいい」のです。

「たいした情報が得られない」中でも、実際に施設に足を運び、見て、聞いて、直接会話をしたからこそ得られた情報や気づきはものすごくたくさんあったはず

新規事業案を立案するにはほど遠いけれど、1回目の訪問前後で、確実に「介護施設のスタッフに関しては少しだけ詳しくなった」のです。

その「少しだけ詳しくなった」ことがとても重要な一歩なのです。

だんだん業界に詳しい状態にレベルアップする

2回目以降も、しばらくこの状況が続いていきます。

また別の介護スタッフの話を聞きに行く、今度は介護施設の経営者に話を聞く、次は入居者に……と回数を重ねていくのですが、この段階では、それぞれの現場訪問では、たいした情報は得られません。

しかし、確実にそのチームは「介護業界に詳しくなっていく」道のりを進んでいきます。

まったく未知の領域に取り組む新規事業のチームは、まずこの「その業界にひたすら詳しくなるための現場訪問」に膨大な回数が必要になってきます。

具体的に何回必要なのかはそのチームの状態や基礎的なリテラシーの状態によるので一概には語れませんが、少なくとも50回、多い場合は100〜150回までは「基本的な勉強」に費やされてしまう段階です。

基本的な勉強の段階を経ると、新規事業チームは「ある程度その業界に詳しい状態」にレベルアップします。

すると、そのころから新規事業チームは「課題仮説」、そして新規事業の種である「ソリューション・アイデア」を「思いつく」ようになります。

そして、その仮説やアイデアを毎回の顧客現場でぶつけて「検証する」ということができるようになっていきます。

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