「飲食の店長はいまや高級取り」 丸亀製麺の「トリドール」が発表した《年収2000万円店長》が与えた衝撃…「単なるウケ狙い」とは言えないワケ

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では、トリドールはどのように丸亀製麺を伸ばしていくか。先の人的資本経営のポイントで言えば、「適切な環境を整備し、触媒を提供することで社員の力を引き出す」ことです。

企業の環境投資の多くは販売費および一般管理費(販管費)に表れます。給料や店舗立地(家賃)、店舗環境(設備備品)など、働くために必要な経費です。

トリドールの販管費は前年比で114.7%と売上高の伸び率に近い数値です。

トリドール販管費の推移

では、従業員の働く触媒としてもっとも大きな要因の1つである「人件費」はどうなっているのでしょうか。

同社の人件費全体では117.4%と、売り上げの伸び率よりも高い数値となっています。

特に役員を除いた従業員にかかる人件費に限定すると、人件費率は32.3%、労働分配率は42.5%です。

外食産業では繁盛店の分配率は40%以下とされている中で言えば、同社は従業員の給料や福利厚生費を上げ、人に重点をおきながらもきちんと儲けている会社であることがわかります。

トリドールの人件費推移

ちなみに、F&LCの人件費率は27.6%です。トリドールはF&LC社に比べて売り上げも利益も低いですが、人件費率は高いわけですから、同じ成長企業同士で比べてみても、トリドールが人に対して投資をしている企業だと言えるでしょう。

同社は人件費を上げることで従業員の満足度(従業員体験価値=EX)を強化して、それが客の満足度(顧客体験価値=CX)につながることを促し、売り上げを伸ばしていこうとしているのが数値からも見てとれます。

これが前述の「ハピカン繁盛サイクル」です。

飲食企業に「おしゃれなオフィス」は必要か?

トリドールの本社は、東京・渋谷区の「渋谷ソラスタ」の19Fにあります。19年に同ビルがオープンするのと同時に移転したのですが、筆者はたまたま引っ越し直後に同オフィスにお邪魔していました。

「これって本当に飲食企業の本社?」と驚いたのを覚えています。

正直なところ、飲食企業に渋谷のおしゃれオフィスは必要ないのではないか? と思っていました。

というのも、飲食の現場は泥くさく、まさに毎日の数百円の現金商売で成り立っている業種です。その飲食店が、店にお金をかけることはあっても本社にお金をかける必要はないという先入観があったからです。

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