
仕事優先で駆け抜けた30代、充実していたが、どこかに心が擦り切れていく感覚もあった。
「私はハードワークしてしまいがちなところがあるんですよね。若い頃からそうで、仕事をしすぎてまだ20代前半なのに睡眠不足で前髪だけ真っ白になってしまったくらい。白髪はずっとなおらなくて、周りの人にはそういうおしゃれ染めだと思われていました(笑)」

素敵な浴室がもたらしてくれた心の変化
40歳を迎えた頃から、暮らしに対する意識が少しずつ変わっていった。職場に近ければ、住まいは狭くても「寝られればいい」と考えていたのが、「もう少し落ち着いて暮らしたい」と思い始めたのだ。
そのためには2LDKぐらいの広さが欲しい。別の賃貸に移ることを考えたが、広さを求めれば家賃が上がる。それならば、いっそ分譲マンションを購入し、自分の拠点を持ってもいいのではないか──。
そして2005年に出会ったのが、このマンションだ。

「新築のモデルルームを見に行って、お風呂に惹かれたんです。このマンションはお風呂に窓があって、そこから小さなベランダにつながっている。『あ、こんなお風呂ってあるんだ』って、感動しました。

当時の私はお風呂グッズに興味があって、せっけんや入浴剤を手作りして同僚にプレゼントしたりしていたんです。
だから素敵な浴室にピンときました。自分の次のステップに必要な何かが、ここにありそうで」
通勤時間は長くなるが、直感を信じて購入に踏み切った。
実際にこの部屋はヨシダさんの暮らしを、“心地よさ”にフォーカスする方向に変えていった。
なんといっても浴室だ。窓からは朝の光が差し込み、湯気のなかに外気が流れ込む。湯舟につかり風にあたると、日々の労働で蓄積された疲れがほどけていく。
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