やりたい仕事は絶対に出会えない? Z世代と上司のモヤモヤを解く「やりがい探し」からの脱却法

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乱暴に言えば、世の中の仕事のほとんどは、「ブルシット・ジョブ」なのです。

「ブルシット・ジョブ」の定義は、「①自分でも無意味だと思っている」とともに、「②自分では、無意味じゃないと取り繕わねばならないと感じている」。そんな仕事です。

パワポ作りどころか、プリントアウトして配るとか、会議日程の調整とか、あなたの、そして私の毎日の仕事は「無意味」かもしれません。AIにもできるかもしれません。誰が担っても同じかもしれません。

ただ、グレーバーが想定したのは、企業のコンプライアンス担当者や顧問弁護士といった、就活エリートの仕事です。きれいなオフィスで、いいスーツに身を包んだ高学歴の人たちが、長時間にわたって従事して、高い給料をもらう業務です。職業ヒエラルキーの最上位層と見る人が多いでしょう。

勉強をしたり面接対策をしたりと、激しい競争を勝ち抜いた末にたどりつくのもまた雑用と同じか、もしかするとそれよりも無意味な職務だとしたら、どうでしょうか。

「ブルシット・ジョブ」の定義で重要なのは、彼らが「自分でもそう思っている」という点です。他人からどう見られているかだけではありません。というよりも、その職務に意味を見出せず、さらには害を与える場合があると自覚しているのではないか。そうグレーバーは看破したのです。

それなのに、意味があるように見せなければならないとしたら、心の平安を保てません。気が進まないどころか、みずからを騙さなければなりませんから、至難の業です。彼らにとってはせっかく勝ち得たポジションだけに、手放しづらい。泣きっ面に蜂です。

エッセンシャル・ワーカーは必要緊急か

では、逆に「ブルシットではない」=「どうでもよくない」仕事とはなんでしょうか。コロナ禍で一気に有名になった「エッセンシャル・ワーカー」を例にとりましょう。

医療従事者などはなくてはならない仕事だとされました。ステイホームのなかでも休めない、それぐらい重要=「エッセンシャル」なのですから、「どうでもよくない」。

でも、本当にそうでしょうか。考えてもみましょう。

「エッセンシャル」の反対語のように出てきたのが「不要不急」です。いまでもしばしば使われますが、そのさらに対義語の「必要緊急」は、ほとんど目にも耳にもしません。「エッセンシャル」が「必要緊急」かと言えば、そうではありません。

「エッセンシャル・ワーカー」は「不要不急」ではないものの、いなかったら誰かがすぐに死んでしまうわけではありません。「エッセンシャル」な仕事のなかにも、「どうでもいい」と思える作業は、星の数ほどあるに違いありません。「ブルシット」かどうか、「エッセンシャル」かどうか、その区別こそ「どうでもいい」のではないでしょうか。

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