――興味深いです。普段の人間関係にも当てはまりそうですね。
もう1つ、病院勤務のときには「何者でもない自分が、そこにいることの力」も実感しました。

患者さんにとって、私は家族でもお医者さんでもない。でも、そんな何者でもない存在だからこそ開けられる扉があるし、届けられる何か風のようなものがあると希望を感じたし、うれしかった。
そんな私たちにとって、タッチングだけでなく、香り(アロマ)は「場」や空気を動かすスイッチのように手助けしてくれます。
人はいくつになっても変われる
――何者でもない人間同士として向き合う。一方的に与えるのではなく、エネルギーをやりとりして増やしていく。その経験や実感は、「はっぷ」の場づくりや活動にもつながっているのでしょうか。
そうですね。“伝える仕事”を目指してアナウンサーになりましたが、こうして道を転換して、アロマセラピストや「はっぷ」の仕事を続けて気付いたのは、私は伝えることの先にあるものに、さらに興味があるということ。

誰かに何かを伝えたり届けたりしたあと、その人との間で何か交歓が起こって、その人が魅力的に輝く瞬間を見るのがものすごく好きなんです。何歳になっても人は変われるし、花開いていくのを見てきました。これからもそのサポートができたらなと思うんです。
とはいえ、それも私たちが誰かに何かを与えているのではなく、やはり循環しているのかなと思います(後編に続く)。
1976年生まれ。99年フジテレビに入社し、アナウンサーとして活躍。退社後はイギリスで植物療法を学び、その後、アロマセラピストとして6年間都内病院で高齢者のためのアロマ施術に従事する他、自身のアロマブランドの商品開発や空間演出、香りによる企業ブランディングなども行う。地元、葉山町ではガーデニングや植物を活用してハッピーエイジングをサポートする「一般社団法人はっぷ」の代表も務める。葉山の昔語りを聞き取って地域の植物活用術をまとめた書籍『葉山和ハーブ手帖』(一般社団法人はっぷ)が好評。2025年春より大学院にて地域の多セクター連携によるインクルーシブな活動に関する研究をしている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら