――体の声が大橋さんの道しるべになった?
そうですね。思春期に病を患っていたので、特に鮮明に感じたのかもしれませんが、私に限らず、体で感じることにはうそがないと感じます。
心は無理が利きますけど、体は正直だと私は思っています。だから、人生やキャリアに迷った時に、体に従うというのは1つの術なんだろうなと。
あのとき、心身で感じた違和感を見逃さず進む道を変えたことは、人生における最初の大きな決断でしたが、自分らしい人生を歩むための決断だったなと思います。そのあとも、違和感があったら自分に立ち返る、動いてみるというのはずっと大事にしています。
――フジテレビを辞められたあと、アロマセラピストという体をケアする仕事に就かれました。アロマセラピーの先進国であるイギリスで学ばれて、帰国後は、病院にも勤務されていたんですよね。
自分の原体験に響いた世界を追いかけてみようと思ったのが始まりでしたが、現場に関わってみないと体感できないなと思って。都内の大きな病院で6年半、勤務していました。患者さんには高齢の方が多く、自宅で暮らすことが難しくなった方々が集う居宅型の病院でした。
私はアロマセラピストとして、医療とは違ったアプローチでお力になれていたかなと思います。病院で療養生活を送っている方々は、外の季節感を感じる機会も少ないですし。植物による癒やし効果も得られるアロマは、喜んでいただけたかなと。
ケアで、エネルギーをいただく
――特に印象に残っていた出来事はありますか?
忘れられない経験はいくつもあります。
まだセラピストとして初期の頃、発話が難しいと伺っていた患者さんに、ケアを続けていたときのこと。その方は投薬の副作用でうなり声が出てしまうと伺っていました。
なんとなくお1人にしてしまうのが忍びなくて、一緒に「うー」と声を出しながら施術をしてしまったんです。するとその方が突然「そんなことしなくていい」と、はっきりと言葉を返してくださったことがありました。
また、別の日は施術を終えたときに「ありがとうございました」と伝えたら、「あり……」まで音になって、その先は唇の動きで「ありがとう」と伝えてくださって。その変化の瞬間に立ち会えたときは、とても驚きましたし感動しました。
――小さな奇跡ですね。
はい。日常的に人が少しずつ変わっていく場面が見られることに感動していました。
施術前は青白かった顔色の患者さんも触れて施術しているうちに、次第に頬に赤みがさして生気がともっていくことが日常的にあって。そのたびに私のほうがエネルギーをもらっているなと感じていました。
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