人気アナウンサーから"何でもない私"へ…大橋マキさん(48)が花形職業をたった2年で退職。選んだのは"ケアをする"という生き方《前編》

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――笑顔の裏には、葛藤があったんですね。

何だか現実感のない日々でした。

朝、ゆりかもめでお台場へ向かう途中、すれ違う観光客の方たちを見ながら、「私はどこへ向かっているんだろう」と。電車の窓から、フジテレビの丸い銀色の球体を眺めながら、ぼんやり思うことが増えていって……。

――転機はどこにあったのでしょう。

とある女性向けの番組で、アロマセラピーを初めて体験したことです。撮影中、セラピストさんが私の足に触れて施術してくださる場面があったのですが、カメラが回って緊張感があるにも関わらず、深くリラックスして。思わずうとうとと眠ってしまいそうになるくらい。

植物の力、香りの力、そして、人に触れてもらうことの力って、すごいなと。会ったばかりの人の心と体をこんなにも開くコミュニケーションに驚いて、学びたいと直感的に強く思いました。

「違和感があったら自分に立ち返る」(写真:今井康一撮影)

コルセットの痛みと母の手の温もり

――大きな出会いだったんですね。

はい。というのも、アロマセラピーを受けているとき、ある記憶がフラッシュバックしたんです。私は中高の6年間、「脊柱側弯(そくわん)症」という病気のため、コルセットをつける治療を受けていました。

真ん中に鉄の棒が入っているプラスチック製のコルセットを、鎖骨の下から腰骨あたりにギュッと巻きつけて、日中も就寝中も外すことができなかったんです。常に違和感や痛みがあったし、体が痣(あざ)だらけになってしまう。

そんなとき、母が「操体法」という運動療法を学んでくれて、お風呂上がりの私を畳の部屋に寝かせて、背中をさすってくれたんです。その手の温かさは今も覚えています。その記憶が、アロマセラピーを受けている瞬間によみがえったんです。

この痛みと癒やしは、私にとっての原体験だなと。

現実感のない多忙な日々、自分が自分でなくなってしまうような感覚がありましたが、いったん、自分の五感に立ち返ろう、体の声に素直になろうと思いました。

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