アムステルダムは、なぜ音楽の中心地なのか 日本の音楽にも注目が集まっている
――風営法などの問題もあり、行政が音楽イベントを主催することは日本では考えられないのですが。
単純です。儲かるからこそ、行政がやるのです。最終的に黒字になることがわかっているから、税金を音楽イベントに投入しても文句を言う人はいないという論理です。ADEには今年も世界中から観客を集め、関係者を含めると37万人以上が来場しました。当然、ホテルやレストランをはじめその他の産業への経済効果もあります。騒音などの諸問題も、国がしっかり管理していますから逆にあらかじめクリアーできているものです。
――オランダは、儲かるのなら行政が積極的に認めて自ら管理する傾向にあります。
ADEは、その考え方の延長にあるものだと思います。音楽業界で言えば、オランダはすべてのビジネスが分業化されていて、それぞれ交渉の窓口や役割がハッキリと分かれています。私が日本で働いていた時は、一人が色んなことを掛け持ちしていて効率が悪かったものです。
とは言え、音楽業界もビジネスでやろうとすれば、分業化されていることは当たり前のことなのです。たとえば、サッカー選手には代理人や所属事務所など、1人のプレーヤーにそれぞれプロフェッショナルがついていることを考えれば理解できるでしょう。
ADEはダンスミュージックが中心なのですが、たとえばティエストというオランダ人DJのギャラは1回あたり約4200万円、年収は29億円と言われています。そこまでいかなくても、10代で年収1億円を超えるアーティストも珍しくなくなってきました。音楽ビジネスの現状は、サッカー業界の状況を考えるとわかりやすいかもしれません。
オランダらしい合理的な考え方
――ADEはそんなライブイベントに加え、マネージャーやプロモーター、さらには楽器メーカーまでが商談を行う国際会議の場所にもなっていることです。
それもオランダらしい合理的な考え方です。アーティストが集まるということはスタッフも集まるということ。それなら、商談をする機会もまとめて作ってしまえばいいということなのです。私自身もイベント期間中は、夜にアーティストを観に行くのではなく、昼間に商談をまとめるほうに労力を費やしています。
――ADEでは、ビジネスマン向けのセミナーも多く開催されています。今年はグーグルがイベント期間中に建物を借り切って、音楽関係者向けのセミナーを開催していました。
私もいくつか出席しましたが、グーグル自身が「どうやってYoutubeを活用すればいいのか、とレクチャーまでしてくれました。これはとても勉強になりました。また、現在Youtube利用者の大半が中南米で、コロンビアやメキシコなど中南米の大都市圏とどう付き合っていくのかというパネルディスカッションもありましたね。
他にも、アーティスト自身がリスナーの質問に直接答える企画や、メジャーレーベルと契約するための若手アーティスト向けのセミナーなど、今年も充実した内容が多かった。このように、グローバル視点で情報を共有する機会は、日本では得られません。
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