小麦もトウモロコシも「コメ」の代わりにならない…日本が水田面積を維持すべき納得理由
コメは非常に魅力的な作物である。世界の農地の2割ほどしかない持たないアジアに、世界人口の6割が集中しているのは、コメの力だといっても過言ではない。1粒の小麦は45倍にしかならないが、1粒のコメは125倍になる。
日本の気候は小麦の作付けにあまり向いていない
「コメがあまるなら、(輸入量が多い)小麦を作ればいい」という発想は短絡的である。そもそもヨーロッパのように、1年をとおして雨が少なく乾燥している地域と違い、北海道などをのぞいて、日本の気候は小麦の作付けにはあまり向いていない。
土の問題もある。粘度の高い湿田では、コメも作りにくいが、畑作にすることはさらに難しい。なにより一般に、畑作物には「連作障害」が発生する。畑作で毎年同じ作物を同じ場所で作付けし続けると、収量がどんどん取れなくなることを連作障害という。とくに、大豆など豆類に顕著である。小麦などの畑作物は、輪作(異なる作物を順番に栽培する)したり、休耕させたりすることが不可欠である。
植物が生育している土壌には、一般に30㎝ぐらいの「表土(ひょうど)」がある。表土には通気性と吸水性の両方が必要で、そのためにも土壌微生物の存在が不可欠である。また、そもそも土とは岩石が生まれた砂・粘土と有機物の死骸から作られるものであり、植物の生育に不可欠な窒素、リン、カリ、微量要素などを含んでいる。畑作における連作障害は、こうした微生物や栄養素の減少・枯渇により発生する。
また、灌漑(かんがい)農業による水資源の枯渇の問題もある。アメリカなど地下水に依存した灌漑農業をおこなっている国では、水資源の枯渇がたびたび話題になる。2022年のカリフォルニア米の大幅な減収も、過去最悪の旱魃(かんばつ)による水不足が原因だ。
さらに、乾燥地域における畑作農業地においては、近年、土壌浸食の被害も激しいといわれている。農地に適した土壌が1㎝蓄積するには、一般に100~1000年かかるとされている。これに対して、たとえばカリフォルニアでは11年で1㎝の土壌浸食がすすんでいるといわれている。