一人っ子廃止ふざけるな!今の中国人の本音 "大本営発表"に従わない世代がやってきた

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「私たちは牛や馬ではない。これまで政府の勝手な都合で子どもは1人だけにしろといってきて、自分にも、友だちにも兄弟はいなくてさみしかった。でも、人口が減ったからって、急に2人産めといわれても、そんなことできるわけない」や「政府が育児にかかる費用を全部出してくれるなら、2人産んであげてもいいけどね」という皮肉を込めたコメントや冷めた意見が相次いだ。

それもそのはずだ。日本でも知られているように、中国では結婚すると男性側が家を購入する慣習があるが、北京や上海などの都市部では住宅が高騰し、かなり郊外であっても価格は日本円にして5000万円以上はザラ。その重いローンに加え、子どもを大学まで進学させる教育費を考えると、相当な高給取りでもないかぎり、2人育てることは現実的に難しい。経済的な負担が大きすぎるからだ。

政府は2013年に「夫婦どちらかが一人っ子ならば2人目を認める」という緩和策を打ち出したが、この制度の利用者は低迷し、たいした効果は得られなかった。危機感を感じた政府は、ついに大英断に踏み切ったわけだが、その背景には深刻な人口減と少子高齢化問題がある。

しのびよる、人口オーナス(重荷)の足音

中国の人口は約13億7000万人。一人っ子政策の結果、1987年をピークに新生児の出生数は落ち始めた。2012年の統計では全国の出生率は1.18と、日本の1.39をも下回る結果となった。平均寿命が延びたため、人口に占める高齢人口も2011年に9.1%となった。

中国はこれまで生産年齢人口(15~59歳)が多い「人口ボーナス」の時代が続き、豊富な労働力を活用して「世界の工場」と呼ばれるまでになった。しかし、2012年に初めて減少に転じ、2014年末までに約9億人となった。経済成長を押し下げる「人口オーナス(重荷)」の時代へと突入してしまったのだ。このまま行けば、人口は2020年にピークに達したあと、年間790万人のペースで下降していく見込みで、労働力不足、人件費の高騰、消費市場の低迷という“暗い未来”が見えてきた。

中国人の赤ちゃん。今後、中国で2人以上のきょうだいは当たり前になるか

同政策はもともと爆発的な人口増加を抑えるために始まったものだ。全国津々浦々で計画出産が奨励され、街中に「計画生育」「一人っ子をよりよく育てよう」というスローガンがあふれ、これを守れない者は巨額の罰金を科せられたり、農村部などでは、無理やり人口中絶をさせられたりしてきた歴史がある。

中国には「後継ぎがいないことがいちばんの親不孝」という儒教の伝統に則ったことわざがあるが、1980~90年代、農村部などでは、最初の子どもが女の子だった場合、政府に見つからないように、こっそり2人目を産むケースもあった。2人目の子ども(あるいは女の子)は戸籍に入れず隠して育てる「黒孩子」(闇の子)と呼ばれて社会問題となり、そうした子どもは全土に1000万人以上もいるといわれている。

これほど痛みを伴ってまで実施してきた人口抑制策だが、これを転換した結果、前述したように都市部の市民の間では否定的な意見が多かった。中国メディアなどでも「すでに遅きに失した政策」「もはや人口増は無理」という意見が散見されている。

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