え? それなら、別の世界最高峰のレースを狙えばいいのではないか?なぜ、そんなに無理をしてまで、凱旋門賞に出るのか? と、素人のみなさんは思うだろう。
答えは、素人のみなさんが正しい。日本の競馬関係者たちにとっては、ただの欧州コンプレックス、呪縛にすぎないのである。
そして、彼ら自身もそれがわかっている。しかし、それでもこだわっているのは、ただの意地である。日本馬が断然世界一だということを名実ともに示し、世界中の関係者に誰にもケチをつけられないようにするためには、凱旋門賞もコンプリートしないといけないのである。
その結果、少し意地になりすぎているきらいがある。例えば、シンエンペラーという馬は今年、凱旋門賞に挑戦する予定だったが、その前のアイルランドのチャンピオンステークスというレースでやや体調を崩してしまい(レース後の検査結果で、ぜん息と中程度の肺出血が判明)、回避することになった。
シンエンペラーは、矢作芳人調教師と馬主の藤田晋氏が、タッグを組んで凱旋門賞を勝つことを1つの目的として、欧州のセールで高額で買い入れたフランス産馬である。2020年に凱旋門賞を勝ったソットサスの全弟(父も母も同じ。父は仏産、母は愛産)である。だから、日本馬の多くに向かない凱旋門賞であっても、この馬だけは向かないはずはないだろう、ということである。
「母も祖母も曾祖母も日本産」の「あの馬」を応援
しかし、私は、この考え方には疑問がある。それは、凱旋門賞は、日本で生産された馬、それも、日本馬として代表的な血統の馬、日本産の馬が父で、母系も何代にもわたって日本産である馬で勝たないと意味がないと考えているからだ。
日本馬とは、日本のJRA(中央競馬会)という競馬組織に所属している馬のことではなく、日本の調教師の管理の馬ということでもなく、ましてや日本の騎手が乗っている馬である必要はまったくない。日本で生産された馬であることがすべてなのだ。なぜそう考えるかは、次回説明しよう。
実は、ノーベル賞は少し違う考え方が必要なのだが、それも次回に。
それゆえ、今年の凱旋門賞では、父がまさに日本を代表する種牡馬のキタサンブラックであるクロワデュノールを応援する。ただし、彼は母が英国産なので、勝つ可能性は低いが母も祖母も曾祖母も日本産であるアロヒアリイをもっともっと応援したい。
(※ 次回の筆者はかんべえ(双日総研チーフエコノミスト・吉崎達彦)さんで、掲載は10月11日(土)の予定です。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)。
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