歴史上最大の陰謀論が人類を自滅させることに気づかないわれわれ、 2025年の陰謀論の「本当の怖さ」はどこにあるのか

✎ 1〜 ✎ 288 ✎ 289 ✎ 290 ✎ 291
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

では、2025年の陰謀論は、ファンタジーと同じように、無害であり、ただのエンターテインメントであり、「陰謀論は現実認識を歪め、社会に深刻な影響を及ぼす」というこれまでの有識者の見解は過去のもので、現在は間違いなのだろうか。

そうではない。より深刻なのだ。

世間で、陰謀論の危険を議論するときには、深刻な被害の部分が現在でも強調されている。ミクロ的には、悪質な新興宗教あるいは悪質なネットワークビジネスにはまった人々を、脱洗脳して、救い出すにはどうするか、という話である。マクロ的には、「トランプ現象」「MAGA現象」などが典型であり、社会的な暴動(物理的であれ、言論的なものであれ)、社会的な分断をどうするか、ということである。しかし、これらの議論は、2025年の陰謀論の本当の怖さに気づいていない。

「2025年の陰謀論の本当の怖さ」とは?

第1に、ミクロ的な個人的な悲劇は確かに存在するが、それは悪質な勧誘、セールス、特殊詐欺、そういったものの被害者と同じである。陰謀論に限った話ではない。むしろ、陰謀論以外によるこれらのミクロ的な被害の方が量的にも質的にも深刻である。

第2に、トランプ現象のような陰謀論の政治的活動への応用は、対立する勢力(一般には、常識的と思われる健全な人々のこと)への被害が明示的に存在し、被害者もその被害に気づく。当たり前だが。

だから、分断であり、激しい対立、論争になるわけだが、これはむしろ、「陰謀論を何とかしなければいけない」という社会の危機感を高め、まもなく収束に向かっていくだろう。こう楽観的なのは、おそらく陰謀論の社会への悪影響を語る人々の中では私だけだろうが、長期的に見れば、修正は必ず起きる。被害者がそこに存在し、彼らは多数であり、少なくとも社会の半分はいるからである。

また、金融バブルのような場合は、被害は大きくなるが、10年に1度、現実に引き戻されるから、修正機能は一応働いている。土地神話が崩れるには、日本でも中国でも数十年かかったし、その被害ははるかに深刻だったが、それでも、修正は起きたのであり、今後も起きるのである。

真の2025年の陰謀論の恐怖とは、社会全体で陰謀論を語り、誰もそれが陰謀論であることに気づかない、という点にある。すなわち、社会全体が陰謀論によって成り立っていることであり、陰謀論が正論であるどころか、絶対的な真理として、陰謀論の世界を実現しようと社会全体が全力を尽くしていることである。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事