「へにょへにょテニス」で世界に衝撃、大坂なおみも絶賛する女子テニス界・異色の新星《伊藤あおい》は何がスゴいのか
海外の選手とは比較にならないほど華奢な体で、握力はわずか12キログラム。棒立ちのフォームから、ボールの下側を切るスライスショットと、山なりのループボールを織り交ぜる。かと思えば、上がりっぱなのボールを速いタイミングで返球する「ライジングショット」で相手の時間を奪い、するするっとネットに出てボレーで仕留める。
その緩急を自在に操りながら相手を翻弄するプレースタイルは、テニスファンの間で「あおい沼」と称される。冒頭のパオリーニ戦はまさに「あおい沼」の真骨頂だった。
ファーストセットはパワーに勝る相手が圧倒。しかし、セカンドセットになると、伊藤選手のリズムとペースにだんだんと巻き込まれ、ミスを連発。この試合、パオリーニ選手のアンフォーストエラー(自分自身が犯したミス)は実に67本(本大会の最多)を数えた。
「必死で返していたら、なぜか相手が勝手にミスしてくれて、気づいたら勝っているんです」と彼女は首をかしげる。いやいや、あなたが「沼らせて」いるんですよ……。

今年の全米オープンでベスト4に進出した大坂なおみ選手は、そんな伊藤選手について、「テニス365」のインタビューで次のようにコメントしている。
「テレビで彼女が映るたびに釘づけになってしまいます。すごく頭がよくて、(中略)とにかくすごく面白い。私には絶対にできないプレーをする選手を見るのが好きなんです」
まるで高収益・低コストの“超優良企業”
「私、なぜか格上の選手のほうが対戦成績はいいんですよ。逆にランキングが下の選手だと勝てなくて……」
伊藤選手はそう証言する。「そんなまさか」と思い、彼女の25年シーズンの戦績を集計してみると、まさに彼女の言うとおりだった。

対戦相手のWTAランキングを、150位を境に「150位以上」「151位以下」で区切ってみると、前者の対戦成績(予選含む)は16勝11敗。対して後者は12勝10敗。「201位以下」に至っては8勝10敗と負け越しているのだ。
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