VW、それでも日本でディーゼル車を売る理由 ブランド失墜でも引くワケにはいかない
排ガス不正問題の発覚前から、VWの日本国内販売が停滞していた要因の一つには、新型車の投入が端境期にあったことや、同じ欧州プレミアムブランドのベンツやBMW、アウディなどがVWの得意としてきた小型車領域に攻め込んできていたことなどがある。加えて、VWが出遅れていたのが、ここ数年で市場が急伸してきている乗用ディーゼル車の展開だった。
2012年に前年比4倍強の4万0567台を記録したディーゼル車販売は、翌2013年には約7万6000台に倍増した。日本自動車販売協会連合会によれば、今年1~8月のディーゼル車販売台数は10万5127台と前年同期比で2.3倍となり、すでに前年を超えている。
かつてのディーゼルエンジンはNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)が相対的に多く含まれており、大気汚染の原因の一つと厳しく批判された。石原慎太郎・元東京都知事による「ディーゼル車No作戦」を覚えている人も多いだろう。その後、規制強化に伴って、日本の乗用車からはディーゼルエンジン搭載車が一時なくなり、「ディーゼル=トラックやバスのエンジン」という図式になった。
マツダが日本のディーゼル人気に火を点ける
一方で、欧州を中心に海外ではさまざまな技術改良によって、厳しい排ガス規制をクリアできるディーゼルエンジンが登場。これがいわゆるクリーンディーゼルエンジン。日本では、マツダがその火付け役となった。
マツダは2012年発売の「CX-5」と「アテンザ」の投入を皮切りに、2014年に「デミオ」「アクセラ」、そして今年初めには「CX-3」で、続々とディーゼルモデルを売り出した。SUV(スポーツ多目的車)のCX-3に至っては、ディーゼル仕様のみの設定とするなど、「乗用車でもディーゼル」という認識を日本のユーザーに植え付けた。
ディーゼル車は、通常のガソリン車と比べて燃費が良く、パワフルな走りが可能なのが利点だ。何より、燃料に軽油を使うことで燃料代を抑えられる。足元のレギュラーガソリンの市場価格が120円台前半である一方、軽油は98円前後と圧倒的に安い。高速道路で走ることの多い欧州で爆発的にヒットし、現在は欧州新車市場の半分がディーゼル車だ。
日本でも欧州プレミアムブランド系の輸入クリーンディーゼル車のラインナップは増える一方。いまやBMW「3シリーズ」ではクリーンディーゼル車が販売の主力となっている。VWのディースCEOは「(不正は起こってしまったが)適切な排ガス浄化装置を取り付ければ、燃費が良くクリーンなエンジンだという概念は変わらない」と話す。VWも日本市場攻略のラインナップとしてディーゼルモデルをそろえておかないと、欧州プレミアムブランドとの競争において、さらに不利な展開になりかねない。
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