ホップを大量に使ったIPAから軽快ピルスナーへ、よみがえるラガービール
きっかけとなったのは、数年前のアメリカン・ライトラガーの復活だ。従来の大手ブランドの淡色ラガーに、クラフトビールの造り手が洗練さや豊かな風味を加えた。
そうした淡い色のビールの仲間が今、増えつつある。
ピルスナー
ラガービールは、底の方に沈降していく「下面発酵酵母」を使い、低温で醸造される。通常、上面発酵で造られるエールよりも軽くてキレのある飲み口となる。
ピルスナーは、その中でもとりわけ軽快で、透明感のある黄金色と、しっかりした白い泡が特徴だ。アメリカン・ペールラガーのようにすっきりしてドライな味わいだ。
「ピルスナーは淡色ラガーの元祖だ。ただ、その風味を一段と引き上げる」。カリフォルニア州パソロブレスのファイアストーンウォーカーのイノベーション・ブリュワリー・マネジャー、サム・ティアニー氏が語る。
ピルスナーは、特にホップの特徴が際立っており、苦みが淡色ラガー特有の麦芽の甘みと調和している。
この革新的なバランスは1840年代、ボヘミア地方(現在のチェコ)のピルゼンで偶然生まれた。この地の醸造家たちが、平凡な地元のエールビールの代わりに、お隣のバイエルンの濃色ラガーに近いビールを造ろうとした結果だ。
ピルゼンの軟水、ハーブのようなチェコ産のザーツホップ、淡色のモルトを生み出せる英国式の釜が組み合わさり、輝く黄金色のラガー「ピルスナーウルケル」が出来上がった。これこそが世界初のピルスナーだ。
アルコール度数は、4.4-4.6%と控えめだ。飲みやすい黄金色のビールの人気は、やがて隣のバイエルンにも広がった。そこで伝統の濃色ビールであるデュンケルと競うため、ヘレスラガーやバイエルン・ピルスが生まれた。