1階にはレトロな雰囲気のタイル張りの浴槽があり、かつては温泉が引かれていたらしい。

2階の個室にはそれぞれに菊、梅などと花の名前が付けられており、各室ともに意匠が異なる。茶室、数寄屋建築でよく使われる網代天井の部屋もあり、お金をかけて作られたことがわかる。


洗い出しに石を埋め込まれた廊下もこうした時代の旅館建築にはよく見られるもの。かつての熱海にはこうした職人が多くいたのだろう。建物好きなら眺めて楽しいはずである。


「関西では宿や飲食店になっているなどで入れる元遊郭の建物がありますが、首都圏界隈ではほとんどありません。つたやは都市から一番近い、入れる遊郭建築ではないか、と言ってくださった人もいます」(髙須賀さん)
店舗オープン前の10月17~26日には「GLOUND ATAMI 2025」と題するアートイベントの開催が予定されており、「つたや」も会場になる予定。建物内部を早く見てみたい人はそこで訪れてみる手がある。
また、「つたや」の新所有者は隣の建物も購入。今後、そちらの再生も行われていく計画だ。細い、人ひとりがやっと通れる路地の奥に入り口があるという難度の高い物件だが、こうして少しずつ中央町の妓楼建築が開いていけばまちの雰囲気も変わっていくだろう。

「つたや再生」から始まる物語
三好さんはそれをきっかけに熱海の空き家、廃墟が開いていくことを期待している。
「このエリアも含め、熱海には数多くの使われていない建物があります。つたや再生をきっかけに古い建物でも使えること、使うことでまちが変わることを知っていただければ」(三好さん)

移住希望者は多いものの、借りられる、使える不動産がない状態が続く熱海。店や住宅として既存の建物がもっと使えるようになれば。「つたや」の再生は熱海の次につながる大きな可能性を秘めている。まずは再生を楽しみにしたい。

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