かつての花街に眠っていた"廃居"がよみがえる! 熱海に30年放置の「つたや」再生への挑戦。貴重な妓楼建築、「熱海の夜」活性化の起爆剤に

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1階にはレトロな雰囲気のタイル張りの浴槽があり、かつては温泉が引かれていたらしい。

1階の風呂
1階の風呂。温泉が引かれていたらしい(写真:筆者撮影)

2階の個室にはそれぞれに菊、梅などと花の名前が付けられており、各室ともに意匠が異なる。茶室、数寄屋建築でよく使われる網代天井の部屋もあり、お金をかけて作られたことがわかる。

各部屋の前
各部屋には花の名前が付けられており、それぞれに違うデザインが施されていた(写真:筆者撮影)
網代天井
網代天井。手のかかる作りで、こだわって建てられていたことがわかる(写真:筆者撮影)

洗い出しに石を埋め込まれた廊下もこうした時代の旅館建築にはよく見られるもの。かつての熱海にはこうした職人が多くいたのだろう。建物好きなら眺めて楽しいはずである。

石などを埋め込んだ廊下
古い旅館ではたまに見かける石などを埋め込んだ廊下(写真:筆者撮影)
傘を模した天井
傘を模した天井。これも手間のかかったもの(写真:筆者撮影)

「関西では宿や飲食店になっているなどで入れる元遊郭の建物がありますが、首都圏界隈ではほとんどありません。つたやは都市から一番近い、入れる遊郭建築ではないか、と言ってくださった人もいます」(髙須賀さん)

店舗オープン前の10月17~26日には「GLOUND ATAMI 2025」と題するアートイベントの開催が予定されており、「つたや」も会場になる予定。建物内部を早く見てみたい人はそこで訪れてみる手がある。

また、「つたや」の新所有者は隣の建物も購入。今後、そちらの再生も行われていく計画だ。細い、人ひとりがやっと通れる路地の奥に入り口があるという難度の高い物件だが、こうして少しずつ中央町の妓楼建築が開いていけばまちの雰囲気も変わっていくだろう。

つたやの隣
人ひとりがようやく入れるほどの路地の奥に入り口がある。熱海にはこうした使いにくい作りの建物も少なくない(写真:筆者撮影)

「つたや再生」から始まる物語

三好さんはそれをきっかけに熱海の空き家、廃墟が開いていくことを期待している。

「このエリアも含め、熱海には数多くの使われていない建物があります。つたや再生をきっかけに古い建物でも使えること、使うことでまちが変わることを知っていただければ」(三好さん)

周辺の様子
細部に凝ったつくりのある建物が多いエリアでもある(写真:筆者撮影)

移住希望者は多いものの、借りられる、使える不動産がない状態が続く熱海。店や住宅として既存の建物がもっと使えるようになれば。「つたや」の再生は熱海の次につながる大きな可能性を秘めている。まずは再生を楽しみにしたい。

【この記事の写真(50枚)】記事中に使わなかった写真も多数!廃居だけれど味わい深さが残る建物、周辺エリアの様子など
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中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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