個別の店舗が、あるいはイベントである日だけ地域を盛り上げてもそれは大きな流れにはならない。「やはり地域に人が集まり、交わる場が欲しい」、髙須賀さんだけでなく、地元の事業者たちがそう思っていたところに「つたや」の話が舞い込んできた。
そこで髙須賀さんはリノベーションスクールに関わり、最終的に「つたや」全体をプロデュースすることになったのである。
熱海の抱える課題
中央町のみならず、盛り上がっているように見える熱海自体にも課題はあり、「つたや」再生はその解決のための一助にもなるのではないかと髙須賀さんは考えている。
「駅前、熱海銀座商店街など人が集まっている場所でも人が並んでいる店、誰もいない店があり、それ以外の場所にはほとんど人がいないなどにぎわいには大きな差があります。
たいていの人は事前に調べた店だけに行くからですが、熱海にはそれ以外にも面白い場所がたくさんある。ただ、行ってみたくてもネット上には情報がなく、知らない場所に行くのは怖いと思う人もいる。
つたやはそんな人の背中を押す、地元の情報を提供する場にしようと考えています」(髙須賀さん)

もうひとつの課題は熱海に少ない夜のコンテンツを生むということ。熱海では夕方以降店舗は閉まってしまい、開いているのは飲食店だけ。そこで夕方から夜までの居場所となる、夜も楽しい場所を作ろうと考えている。
今後、建物の改修を経て2025年10月末から11月下旬にまずオープンするのは髙須賀さんが経営する熱海の夜の雑貨店。
ここは観光客向けだけでない雑貨類などを販売する場所であり、まちの歴史を伝える場ともなる予定だが、他の部屋には書店やレコード店その他個性的な店舗を集めることを計画している。
これまでの熱海になかった文化拠点的な空間が生まれるということだろう。

さて、実際の「つたや」だが、1階、2階ともに雨漏りが激しく、一部の壁は崩壊している状態。それでも建物内には往時の繁栄を思わせる箇所が多く残されており、見どころは多数。


1階の元お茶漬け店内には壁に建物名である蔦やひょうたんの形の飾り窓があり、店内の各コーナーを分けるように屋根が掛けられているのも人目を惹く。


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