ルネサスエレクトロニクスに迫る危機 トヨタ、日立へ出資要請、大連合の成れの果て
ルネサスの管理部門社員が打ち明ける。「エルピーダは政府が公的資金を入れて直接支援してきた会社。それが破綻したことで、銀行の雰囲気がガラッと変わった。社内は今、財務の話で持ちきりだ。この3月を何とか乗り切ったというのが実情で、今後3カ月(4~6月)をどう乗り切るかが焦点になっている」。
3月末、現場では連日のように「お願いメール」が飛び交っていた。「新年度(13年3月期)の予算計画を出しても(銀行対策には)数字が足りないから、売り上げや利益をもっと上積みできないかという“お願い”が何回も来る。“お願いメール”という言葉が、ちょっとした流行語になっているくらいだ」。
ルネサスの業績と主な財務数値を四半期ベースで整理したのが上の表だ。これを見ると、震災被害から立ち直り始めた7~9月期以降も、売上高は前年同期比で約2割減が続く。にもかかわらず、在庫は足元で急増している(図)。「復興需要に備えて在庫を積み上げていたが、タイ洪水もあって需要が想定を下回った」(ルネサス)というのが表向きの理由だが、関係者によれば「稼働を落とすと赤字が増えるので、減産できないまま在庫が積み上がった。モノの置き場に困って、あちこちで倉庫を借りている」。在庫増は今後の財務リスクに直結する。
一方、手元資金は昨年5月に1100億円の社債償還を行ったこともあって急減。加えて、売り上げ減を上回るスピードで売掛金が減っているのに対して、買掛金は横ばい。回収を急ぐ反面、支払いを遅らせる、資金繰り対策がうかがえる。
ルネサスは赤字の元凶であるSoC(デジタル家電向け中心の高性能LSI)部門を大幅縮小する方針の下、事業売却を推し進めている。が、これまでに実現できたのは、どれも小粒の案件ばかり。3社統合によって水膨れした過剰な設備・人員をスリム化しようにも、リストラ資金が捻出できず、抜本策に踏み込めない。救済策が水面下で駆け巡っているのも、こうした八方ふさがりの状態に置かれているからだ。
常態化する赤字販売 お上にすがり再編へ
規模は世界5位クラス、車載用マイコンでは世界シェア4割という圧倒的な存在感を持つにもかかわらず、なぜルネサスは赤字から抜けられないのか。それを考えるために、少し歴史をさかのぼってみよう。