ルネサスエレクトロニクスに迫る危機 トヨタ、日立へ出資要請、大連合の成れの果て
筆頭株主の日立と2位株主の三菱にも出資要請が行われた。信託設定分まで含めると日立を上回るNECにも、本来なら要請が行くはずだが、自身が深刻な経営難のNECは資金援助から“免責”されているようだ。三菱はルネサスへの影響力や会社の規模で日立には到底及ばないため、出資に応じるかどうかは、日立に判断が丸投げされた状況だ。ルネサス社長が日立出身であることなどからも、業界には「日立が面倒を見るべきだ」とする声が多い。
しかし、日立は業績変動の激しい半導体事業などから撤退、米GEや独シーメンスを相手に世界で戦えるインフラ企業へと変身する方針を明確にしている。今さらルネサスに出資したら、それこそ株主に説明がつかない。
ルネサス設立前後の増資資金(3社合計で約2000億円)が“手切れ金”と位置づけられていたことも考え合わせれば、追加出資の正当化はなおさら困難だ。調整が難航するのは、目に見えている。
エルピーダの余波で資金繰りに汲々
「資金繰りがそうとうまずいのではないか」。3月中旬、ルネサスから支払い条件の変更を求められた取引先は、不安を募らせた。
ルネサスの説明によれば、支払い条件の変更は旧ルネサステクノロジ(RT)と旧NECエレクトロニクス(Nエレ)のシステム統合に伴うもので、資金繰りとは関係ないという。だが、条件をRTからNエレ基準に変更すれば、入金タイミングは現在の2カ月後から半年後へ、4カ月も先延ばしされる。「なぜ統合から2年も経つ、このタイミングなのか」。エルピーダ破綻直後の変更だけに、取引先は大きな不安を感じたという(エルピーダは昨年暮れに1カ月の支払い延期を告知、2月末に倒産した)。
もちろんルネサスは、エルピーダと違って1000億円を超すようなまとまった借金返済が目前に控えているわけではない。とはいえ、借り入れは1年以内の短期ローンが中心で「存続はリファイナンス次第。つまり、銀行が業績計画をどう判断するかに懸かっている」(クレジットアナリスト)。そこにエルピーダ破綻の余波が襲った。