日本が一夫多妻制だった平安時代「恋文を父親が代筆」「女はよそに通う男を待ち続け…」 貴族たちの驚きの恋愛観
次に、告白の仕方です。現代を生きるみなさんは、どんな風に異性に愛を伝えますか?「あなたが好きです」とストレートに伝えますか?古文の世界の中では、そんなストレートな告白はあまり見られません。むしろ、率直な好意は控えられ、婉曲的で余白を残すような表現が好まれました。そして、それに対する返答もまた、「喜んで!」とすぐに返すことはありませんでした。
告白はストレートではなく婉曲的に
平安時代では、恋愛はストレートに気持ちを伝えるものではありません。愛の告白そのものも、直接的に「好きです」「会いたいです」と言うのではなく、和歌や比喩を使って間接的に気持ちを表現することが多かったのです。
たとえば「夜も眠れぬほどに思い悩んでいます」といった言い回しで、恋心をにじませる。そうした婉曲的な表現を読み解くことで、相手に想像させ、駆け引きが始まるのです。むしろ、「いかにすぐに答えを出さず、相手に想像させるか」「どのように返歌をすることで品位と余裕を保つか」といった“駆け引き”こそが恋愛の基本とされていたのです。
たとえば、恋文や和歌が届いたときに、すぐに返事を出すことは必ずしも良い印象にはなりませんでした。返事をすぐ返す=がっついている、という印象を与えてしまうため、あえて一晩寝かせたり、曖昧な返事を返したりすることで、『慎重な態度を示す』というメッセージを込めていたのです。
また、和歌のやり取りにも「断るように見える技術」がありました。たとえば、季節の情景や自分の心の曇りなどを詠み込むことで、やんわりと拒絶の意思を伝えることがあります。
しかし、当時の女性は、このように和歌では駆け引きを楽しむもので、どれだけ好きな男性にも、やんわりと拒絶するような和歌を送ります。それを見て、男性も拒絶されたとは思わず、恋が燃え上がるという、高度なコミュニケーションをしていました。
こうした駆け引きの根底には、貴族社会ならではの美意識があります。恋愛であっても、むしろ恋愛だからこそ、相手に敬意を払い、礼を尽くすことが求められたのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら