批判されたクリエイターが自ら解説し共感を獲得。万博の情報発信課題が次回イベントに残した反省点

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ちなみに、これら若手建築家のトイレや休憩所については、東京・乃木坂にある「TOTOギャラリー・間(ま)」にて10月19日まで「新しい建築の当事者たち」という展覧会が行われている。展覧会を見れば、いずれの施設も素材選びから、新しい工法へのチャレンジ、万博後の計画までいかに考え抜いて丁寧に計画されたものだったかを詳しく知ることができる。

TOTOギャラリー・間 40周年記念企画2 「新しい建築の当事者たち」
10月19日まで東京の乃木坂で開催しているTOTOギャラリー・間 40周年記念企画2 「新しい建築の当事者たち」を訪れると、若手建築家が手掛けたソーシャルメディアで散々な評判だったトイレや休憩場の1つ1つが、実は素材選びや工法、そして万博が終わり解体した後の建材の活用や環境回復まで実に深く考えられていたことがよくわかる。これら注目すべき若手建築家が、現代にありがちなソーシャルメディア上での強い批判にさらされながらも、人々からの指摘1つ1つに向き合い真摯に応え、評判を回復していったことは、これからの日本の建築について非常に明るい材料になったと思う(筆者撮影)

万博への大きな批判の正体とは

大きな批判の正体はいったい何だったのか。万博の批判については正当なものもあるが、多くは事実誤認や背景理解の不足が原因となっており、ちょっと手間をかけて事実確認をすればすぐに消えるものも少なくない。

例えばトイレに関しては若手建築家の奇抜なトイレしかないと大袈裟に騒ぎ立てる声もあったが、実際に万博会場に足を運べば、若手建築家のトイレはわずか8カ所しかなく、会場のほとんどのトイレはパビリオンなどの施設内にある変哲のない普通のトイレであることがすぐわかる。

奇抜な素材や工法に対する批判もあるが、これも万博という特別な機会だからこそ行われたチャレンジだと知れば捉え方が変わってくることだろう。万博はわずか半年間しか行われず、作られたパビリオンや施設の多くは会期終了後取り壊しになる。これはもったいないことのようにも思えるが、だからこそ厳しい建築基準法のルールに縛られず、仮設建築のルールで、まだ建築基準法で認められていない素材や新しい工法を試したりといったことができる場でもある。

この機会に対して若手建築家や落合陽一氏の人気パビリオン「null²」などを含む多くのパビリオンは無難な建築方法ではなく、これまで見過ごされていた建材や、これまでの技術では建材として使えなかったものを最新テクノロジーで建材として活用するなど数多くのチャレンジを行っている。

さらに万博終了後についても、もともとあった河原に戻したり、万博の開発で掘り起こされた大阪湾の海底の埋め戻し材として活用したり、そのまま移動して他の場所で再利用したりとあらかじめ考えた上で作られている。

こうしたさまざまなチャレンジの結果、未来のより地球環境に優しい新しい建材や建築工法が生まれてくる可能性もある。

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