批判されたクリエイターが自ら解説し共感を獲得。万博の情報発信課題が次回イベントに残した反省点
もっともそうしたことはできあがったトイレを見てもすぐにわかるものではなく、解説を聞いて初めてわかることが多い。疑問を抱くこと自体は自然なことだ。大事なのはその後、批判をする前に事実を確認したり、背景にある考えを理解しようと努めたか否かだろう。
炎上した話題で言うと、ユスリカという虫の大量発生も大きな話題になったが、これも実際に問題になったのはわずか2週間ほどのことだった。
会場内の噴水や遊び場として作られた水溜りの水質汚染の問題も指摘されたが、これもちゃんと調査をした結果、問題がないことが判明している。人々が過敏になっていなければ「水質汚染の恐れがあるので、しばらく運用を止めて調査を行う。」、「調査を行ったところ問題がなかったので運用を再開した」と言うだけのことなのだが、ソーシャルメディア上では、驚くほど強い言葉での批判が多く集まった。
日本人は過剰なまでにきっちりと品質管理をする性質がある。一方で、ソーシャルメディアでは、自分の目は隅々まで行き届いているが、他の人の目はそうではないだろうという疑心暗鬼な人の発信が目につきやすく話題になりやすい。現状を確認することなくそうした話題が拡散されて炎上になることが多いという印象を受けた。
万博のレガシーとして残したい「対話重視」の姿勢
ただ、今となってはこれらのやり取りは未来にとって良いレガシーになるのではないかと思っている。
何度にもわたって強い語気で否定されたものが、後日、そこまで大した問題ではないと発覚する状況が繰り返されたという事実は、今後、例えばGREEN×EXPO 2027などで同様の批判が盛り上がった際に、議論をより健全な方向に導くための反証として活用できるはずだ。
ソーシャルメディア登場以後、世界的に強くなったキャンセルカルチャーに対抗できる事例を多く残してくれたことは、大阪・関西万博の重要なレガシーの1つだろう。
この経験を経て人類がソーシャルメディアを本質にたどりつかない表層的な言い合いの道具から、対話のための道具へと進化させることができれば嬉しいところだ。
シグネチャーパビリオンの1つ、「Dialogue Theater - いのちのあかし - 」を手掛けた映画監督の河瀨直美氏は分断の時代に対話こそが重要だと訴えている。
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