批判されたクリエイターが自ら解説し共感を獲得。万博の情報発信課題が次回イベントに残した反省点

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本来、IT(情報テクノロジー)は、こうした埋もれがちな情報を可視化して発見性や総覧性を高めるために使われるものだ。しかし、万博協会などの取りまとめ役がすべてのパビリオンに毎日ヒアリングをして、情報を加えていくのは無理がある。なので、最初からどのような情報が出てくるかを想定し、データのフォーマットを作り、各パビリオンや出展者にはそのフォーマットを活用してもらうようにすれば、もっと全体の情報の見通しが良くなったはずだ。今回の万博の情報の集約や発信では、そうした情報のグランドデザインをする人がいなかったように見える。

実は公式サイトの「活動報告」というコーナーを見ると、万博協会が、この万博を成功させるために2019年頃から数々の会議やインタビューなど膨大な量の活動をして、その上にこの万博が行われたことがよくわかるが、これら活動報告の情報も、ただ掲載したというだけで特定の領域の活動を時系列で辿ったりといった見やすさの工夫がほとんど行われていない。情報があまり活用できない形で大量に死蔵されているのだ。これはそもそものサイトの設計(デザイン)の問題に他ならない。

公式のWebサイトや予約サイトなどの入札においては、大手IT企業などで技術職に就いた経験のある人間が入札の評価を行い、単に実績があるかないかだけでなく、その質まで問うようにしないと失うものが大きい、という重要な教訓を得たように思う。

今後のイベントでは万博の反省を生かした情報提示を

2027年開催のGREEN×EXPO 2027などで、この反省を生かしてどのような情報提示の設計がされるかしっかりと見守りたい。

もっとも今回の万博での活用には少し時期尚早だったが、今後の万博では、すべてのイベント情報を覚え込ませた対話型AIを用意して、ITリテラシーに関係なく、誰もがAIに知りたいことを尋ねる形での情報提供が一般化するのかもしれない。

多くの大型パビリオンには専用のシアターが用意され、そこで政治家や国際機関、宗教的リーダー、科学者、デザイナーなどあらゆる分野のリーダーによる会議が日々行われている。ただし、そうしたトークの記録などはパビリオン任せで全貌を知ることはできない。上は8月12日の特別な「ハイジの日」に開催されたイベント「政治における女性たち」での上川陽子前外務大臣による基調講演の様子(写真提供:スイス大使館)。下はイタリア館にて9月20日まで開催されている世界的な若手デザイナーの登竜門の過去の展示を振り返る「SaloneSatellite Permanent Collection 1998-2025 Exhibition」で行われたサローネサテリテ創始者兼キュレーター 、マルヴァ・グリフィン・ウィルシャー(Marva Griffin Wilshire)と日本の若手デザイナーたちによるトークの場面。©Italy Expo 2025 Osaka
林 信行 フリージャーナリスト、コンサルタント

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はやし のぶゆき / Nobuyuki Hayashi

1967年、東京都出身。フリーのジャーナリスト、コンサルタント。仕事の「感」と「勘」を磨くカタヤブル学校の副校長。ビジネスブレークスルー大学講師。ジェームズダイソン財団理事。グッドデザイン賞審査員。「iPhoneショック」など著書多数。日経産業新聞「スマートタイム」、ベネッセ総合教育研究所「SHIFT」など連載も多数。1990年頃からデジタルテクノロジーの最前線を取材し解説。技術ではなく生活者主導の未来のあり方について講演や企業でコンサルティングも行なっている。

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