批判されたクリエイターが自ら解説し共感を獲得。万博の情報発信課題が次回イベントに残した反省点
2005年の愛・地球博の時代は、まだソーシャルメディア普及前で、2010年の上海万博は中国開催のため利用が規制されていた。2020年のドバイ万博はコロナ禍の開催ということもあり、バーチャル訪問者が物理来場者の10倍の2億5000万人に達したが、言語がアラビア語なためかソーシャルメディアの調査統計はあまり残っていない。比較がしやすいのは2015年の3億人がネット上で話題にしたというミラノ万博だが、同万博開幕1週間の間のTwitterでの話題は33万件なのに対して大阪・関西万博は460.8万件で約14倍も話題の量が大きい。
ソーシャルメディア上の評価の変遷
では、ソーシャルメディア上での大阪・関西万博の話題はどのように変遷していったのか。
最初はネガティブなスタートだった。開幕の是非、何度かあった建設費増大のニュースに対しては連日多く批判が寄せられた。ロゴマークやマスコットの「ミャクミャク」の見た目についても「気持ち悪い」などの批判が多かった。
工期の問題や、そもそも工事費のかかる大屋根リングが必要なのかといった批判も何度も出てきた(万博を訪れた人が、なんといっても高く評価するのは大屋根リングの存在で、現在では全部を残すことを求める運動も起きている)。
このように開幕前から悪評が続いたイベントというと4年前の「2020年東京オリンピック・パラリンピック」の記憶が新しい。
こちらも開催の是非に始まり、競技場のデザインや大会ロゴ、運営のあり方、開会式、閉会式などすべてが批判の対象となり、競技場案やロゴに関しては発表後に白紙撤回するという大きな混乱を見せた。人々が時には度を越した激しい言葉で批判を続ける「キャンセルカルチャー」という言葉を広く知らしめるきっかけにもなった。
だが、しばらくすると両イベントの違いがハッキリし始める。オリンピックでは国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会による情報統制が強く、指摘された問題に回答するのは基本的に両委員会の人間で、議論を重ねてから回答をするのでタイミングが遅く杓子定規で、共感を得られなかった。批判を受けたクリエイターはほぼ釈明の機会を与えられないまま社会的に抹殺された。
万博に対する批判についても、最初はマスメディアが博覧会国際事務局(BIE)や日本国際博覧会協会(以下、万博協会)にコメントを求め、同様に杓子定規な回答をしていた。
しかし、2024年1月27日、建築家で会場デザインプロデューサーの任を得た藤本壮介氏が「いろいろな意見はあると思うが、とにかく説明し尽くす、というのをやってみようと思う」と自身のX(旧Twitter)に投稿。それに続けて「万博の意義」、「会場計画の意図」、「木構造の意義」、「万博の会場整備コストについて」といった話題について1つ1つ丁寧に舞台裏の説明を行った。この投稿は現在も氏のプロフィールページのトップにピン留めされている。
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