怒りを我慢する人が陥る「自分を見失うリスク」。ネガティブな感情は表に出してはいけないと考える「いい人」ほど人生が苦しくなる理由

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感情の中でも、特に抑圧しがちなのが「怒り」です。 感情をマネジメントする、コントロールする、というようなメソッドは巷にあふれていますが、どんな感情も生きるために必要なものなので、感情をマネジメントしようとすると、生きるエネルギーが損なわれていきます。 特に怒りは、コントロールするべきと考えられる感情ですが、自分が大事にしていることを否定されたり、踏みにじられたり、自分の領域にズカズカと入り込まれたら、怒りを感じて当然です。

しかし、多くのビジネスパーソンは、「感情的にはなってはいけない」と考えて怒りを出さないようにしたり、怒りが湧いても瞬時に抑え込んだりしています。人によっては、怒りの矛先を無意識のうちに自分に向けて、「至らない自分が悪いのだ」と自分を責めたりします。

怒りを正しく表出するテクニック

人間だって、怒りたい時に怒っていいのです。 ただし、怒りをそのまま相手にぶつけてしまうと、相手を傷つけたり、人間関係を壊したりするリスクがあります。相手も自分も傷つけない方法で怒りを表出し、完了させていく方法を紹介しましょう。エンプティチェアを使って、ガマンしていた怒りの感情を安全に表現するワークです。

エンプティチェアは、カウンセリングの中でも使う手法です。目の前に椅子を用意します。椅子に相手が座っているとイメージし、椅子に向かって、本当は言いたかったけれど言えなかったことや、その場で出せなかった怒りを表現してみます。「あの時、あんなふうに言われて嫌だった」「上司だからって無理難題を言うな」などと言いながら、場合によっては椅子を叩いたり蹴ったりしてみてもいいでしょう。

初めての人は、自分が変なことをやっているような恥ずかしさや戸惑いを感じるかもしれませんが、誰もいない部屋で一人で行うので大丈夫です。自分の内にある感情や言葉を外に出すことが、エンプティチェアの狙いです。「これが本当に自分の言いたかったことなのだ」「自分が大事にしている価値観を否定されたから怒りが湧いたのだ」と気づいて認めることで、自分を取り戻すことができます。

実際にやってみると、相手不在で反論される心配もなく安全なはずなのに、なかなか言葉が出てこないことがあります。そのことで、どれだけ自分が感情を抑えていたかがわかります。 また、言葉にしてみたら、「自分で思っていたよりも怒っていたな」「こんなにガマンしていたんだ」ということにも気づくかもしれません。それだけでも自己理解が進みます。

上谷実礼 医学博士

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うえたに みれい / Mirei Uetani

千葉大学医学部医学科卒業。労働衛生コンサルタント(保健衛生)。公認心理師。千葉大学博士(医学)。千葉大学大学院非常勤講師。生活習慣・生き方と健康との関係に興味を持ち、社会医学系研究室で研究・教育に従事したのち、産業医として独立。のべ1万人以上の面談・カウンセリング実績。アドラー心理学・ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論が専門。著書に『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導』『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(ともにメディカ出版)などがある。

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