「流通にほぼ乗らない」揖保乃糸の激レア"兄弟パスタ"。手延べ製法で生まれる「1年寝かせ麺」の実力と、リピーター続出を支える3軒の革新者

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森口さんが事業を継いだのは25歳のとき。父である4代目が急逝したことによる突然のバトンタッチだった。

「とにかく迷惑をかけないように必死でした」と、当時を静かに振り返る森口さん。衛生管理体制の強化に努め、国際規格FSSC22000を取得。380ある生産者のなかでもこの認証を取得している工場はごくわずか。よりよい環境づくりや生産体制の向上に惜しみなく取り組む姿勢は、品質への揺るぎない覚悟を物語っている。

同社は、特約販売店でもある。揖保乃糸といえば、木箱に入った伝統を感じさせる格式高いものが一般的だが、それだと若い世代にはなかなか手にとってもらえない。そこで、鉄道好きの社員が思いついたのが、車両デザインパッケージである。

森口製粉製麺
ローカル線であるJR姫新(きしん)線の車両デザインパッケージ。JR駅構内でも販売、お土産として人気があるという(筆者撮影)

加えて5束という手軽さが手土産に選ばれやすく、鉄道ファンやファミリー客に支持されている。

これ以外にもレトロ缶に入れたギフトも販売。意見が活発に出せる社風もあり、若い世代が手にとりたくなるようなパッケージデザインのアイデアが日々生まれているのだとか。

若い世代といえば、作り手サイドの若手育成もまた、喫緊の課題だ。そうめん製造は全11工程・36時間を要する労働集約型の仕事。そこで森口さんは、勤務終了から始業まで11時間空ける「勤務間インターバル制度」を2019年から導入した。

工程を分業化し、“弟子”のように一部工程を担当する若手社員を増やすことで、職人の過重労働を防ぎつつ育成を進めている。

揖保乃糸
手延べ製法の揖保乃糸製造のほか、機械製麺でOEM製造なども担っている。写真の建物の奥に揖保乃糸製造工場がある(筆者撮影)

最後に紹介するのは、そうめん製造だけに専念する個人工場・谷口製麺所だ。姫路市安富町にあるこの工場は、実は筆者宅の“ご近所さん”である。

次ページ製造だけに集中できる環境だから、大きな投資ができる
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