マンション管理組合が国債投資へ動き始めた背景、数億円の修繕積立金をインフレ防衛

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債券投資に着手した管理組合もある。ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン(横浜市)では、24年12月に運用を始め、金融系の企業2社の社債と国債、総額2億5000万円を保有する。年限は最大12年で、10年超の商品はAA格以上、短期債であればA格以上など購入できる商品の詳細な条件を定めた。明確なルールを設け、継続性や透明性を高めるためだ。

「反対意見はあまりなかった」と、同マンションの管理組合法人副理事長を務める野邨健太さんは話す。日銀の利上げもあり債券投資への理解を得やすかったことに加えて、管理組合法人が実績を残しており、住民から信頼を得ていたことも背景にあるという。

イニシア千住曙町でも、北千住駅近くの大手証券会社3社のうちどこかで口座を開くことを4月の総会で諮ったが、大きな異論は出なかった。国債や地方債を買えると規約に明記されていたほか、やはり管理組合法人のこれまでの取り組みが住民に評価されていたためだ。

ゼロ金利政策は続かず、いつかインフレの時代が来ると考えて備えた結果、大きな利益を確保したケースもある。パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー(川崎市)では、約15年間の資産運用で約2億7000万円の利益を出した。修繕積立金を国債や社債で運用したほか、駐車場の外部への賃貸で地道に増やしてきた。

同マンションの管理組合法人で代表理事副理事長を務めた経験を持つ住民の志村仁さんは、「デフレの時代は終わった」と強調する。家計や企業経営と異なり、収益源の限られるマンション管理は、赤字リスクが高いとも指摘する。「確実にお金は余計にかかる」ため、たとえ1万円でも10万円でも、ないよりもあった方がいいと志村さんは言う。

残高不足が約4割

インフレが続けば、積立金では大規模修繕の費用を賄えなくなる可能性もある。国土交通省のマンション総合調査によると、すでに23年度時点で計画に対して残高が不足している組合が全体の約37%に上った。

明海大学不動産学部の小松広明教授は、お金が足りない場合、外壁塗装などが先延ばしにされる可能性があり、資産価値の低下につながると警鐘を鳴らす。

マンションを巡っては、所有者が高齢化し、建物自体も老朽化する「二つの老い」の問題が指摘されている。マンション居住者の世帯主の年齢は60歳代と70歳代を合わせて49.5%。年金受給者の住民が多くなり、積立金を超える修繕費用を拠出できず、整備がおざなりになったマンションが増えれば、街のスラム化リスクも生じる。

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