中国はロシアへの軍事支援を拡大する/習近平はウクライナ戦争長期化へ戦略を転換、もはや中国の同意なしで和平を選択できないプーチン

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抗日戦争勝利80年記念式典で揃ったロシアのプーチン大統領(左)、中国の習近平国家主席(中)、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(右)(写真:Bloomberg)

上海協力機構(SCO)首脳会議に続いて、2025年9月初めに北京で行われた抗日戦争勝利80年を記念する大規模な軍事パレードは、米欧に対し軍事的に対抗する中ロ朝による連携体制構築を誇示した。

「動乱の枢軸(axis of upheaval)」結成とも呼ばれるこの動きはウクライナ情勢に一体どのような影響を与えるのか。実は、今回のパレードは、戦場でこれから起きるであろう大きな地政学的変化を予告すると同時に、軍事的対立構図の変化が水面下ですでに起きていることを反映している。

この変化を代表するのが、習近平政権の対ウクライナ戦争戦略の大転換だ。

筆者は「日本はロシアと中朝との軍事連携に注意せよ、ウクライナ戦争が続くにつれ、北朝鮮だけでなく中国とロシア派手を結ぶ」(2025年6月28日)の中で、イランが開発した攻撃用ドローン「シャヘド」を中国が改良し、ウクライナの戦場に投入しているとの情報があると紹介した。「ロ中の軍事提携関係がより明確になるのは時間の問題」との軍事筋の予測も紹介した。

中国のロシアへの軍事支援が次々と明るみに

今、その予測が現実のものになりつつあるのだ。ドローンをめぐって、中国は冷却装置と称してロシア製の長距離攻撃用ドローン「ゲラン2」にエンジンを提供したとみられていたが、最近は中国がひそかに提供したジェットエンジンを搭載した「ゲラン3」が登場している。

軍事筋によると、この「ゲラン3」は飛行スピードが時速約600キロメートルと、従来のドローンより高速なため、ウクライナ側は防空システムの改良を迫られている。

米欧は外交上は中国に対して、軍民両用部品を供与していると非難しているが、実態は明らかにロシア軍への武器支援と言える。ドイツの情報機関は「中国はもはやウクライナでの戦争に参戦している」と判断しているという。

最近は中国がさらに一歩踏み込んだ軍事支援の動きを見せている。軍事筋によると、中国がロシア政府に対し、電子戦用兵器を供与する可能性に言及し始めたという。電子戦用兵器は、攻撃用ドローンの襲来を妨害する目的でも使われる。ウクライナ軍のドローン兵器に悩まされているロシア軍からの要請を受けたものだろう。

ただし中国側はこの電子戦用兵器を戦線から離れた場所に配備し、中国製ということがわからないようにすることを要請しているという。加えて中国が開発したレーザー兵器をロシア側にテスト用に渡したとの情報もある。

こうした情勢を踏まえると、今回の訪中でもプーチン大統領が習近平国家主席にさらなる武器支援を要請したのは間違いないだろう。

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