「これ絶対記憶あるって」「もうエンタメだろ」との心ないコメントも…島根で発見《記憶喪失の男性》をめぐる反応に"決定的に欠けた視点"

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ここでのポイントは、身元がわかったとしても、記憶が戻るかは別問題であること。今後の診断や治療によるところがあるとはいえ、記憶が戻らない限り苦しい日々が続くのかもしれないし、逆に記憶を取り戻せたことで苦しむのかもしれない。

そもそも記憶喪失になったきっかけは、事件に巻き込まれたのか、不慮の事故なのか、何らかの悩みを抱えていたのか。記憶を失う前の苦しさが戻り、命を絶つなどの最悪の選択につながってしまうこともないとは言い切れないでしょう。

いずれにしても「記憶喪失になったきっかけがわかっても、わからなくても苦しい」という可能性がある以上、第三者がその苦しさを増すような行為は避けたいところ。何より命にかかわる取り返しのつかない事態を招きかねないことは覚えておくべきでしょう。

また、家族と名乗る人は信用できそうではあるものの、友人・知人などで対面する中にネガティブな影響を及ぼす人がいないとも限りません。支援団体などの協力を得ながら事を進めていく慎重さが求められるなど、身元がわかったからといって必ずしも穏やかに過ごせるわけではないでしょう。

第三者が知りえない難しさを抱えている

筆者が対面した相談者さんの中にも、記憶喪失の悩みを抱える男性がいました。難しさを感じさせられたのは「身元も家族もわかっているのに、自分の過去にふれても記憶は戻らない」と言っていたこと。

さらに「だんだん記憶を取り戻せないことより、『記憶を取り戻してほしい』という期待に応えられないことに苦しくなってきた」と語っていたのです。

もう1人、「妻の記憶障害がある日、突然戻った」という相談者さんもいました。その男性は「記憶は戻ったけど、脳の問題なのか性格が変わってしまって、どう接したらいいのか戸惑っている」と悩んでいたのです。

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