もはや「富裕層しか建てられない」日本の住宅…欧米で普及する方式導入で価格は下がるのか

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一括請負方式は、元請け業者が裁量を発揮しやすい。受注競争で無理な値引きをしても下請け叩きで利益を出すこともできるし、赤字工事が発生しても他の工事でそれ以上の儲けを出せば相殺できる。発注者も最初の契約金額で工事が完了すれば良いわけで、オープンブック方式で発注者自らがコスト管理を行う労力はかけたくないだろう。

しかし、三菱商事・中部電力グループが洋上風力発電所の建設計画から撤退した理由は、資材インフレなどで採算が取れないと判断したからだった。民間事業者側はインフレリスクや資材調達リスクをどのようにカバーしようとしていたのか。発注者である国は全てのリスクを民間事業者側に負わせようとしていたのか。「総価一括請負方式」は過度な価格競争を招く危険があるが、国は落札額を適正と判断したのか。

公共施設やインフラの運営管理を民間事業者に委託するコンセッション方式も、インフレリスクの増大によって民間事業者側の負担が増えて受託が厳しくなっている。その打開策として、日本PFI・PPP協会では「オープンブック方式を活用できないか、検討している」(植田和男会長兼理事長)。

欧米に比べてBIMなどのデジタル技術の導入に遅れ

日本では、発注者も受注者も「オープンブック方式」の必要性を認識せず、欧米に比べてBIMなどのデジタル技術の導入が遅れ、積算やコスト管理の技術者の育成を怠ってきた。2020年代に入って、予算オーバーや工期遅れで大幅な赤字を計上する大型工事が散見されるようになったのも、それが原因との厳しい指摘もある。

まずはMSJグループがめざす住宅生産プラットフォームのようにサプライチェーン全体のデジタル化を徹底的に進める。そのうえで発注者も含めて建設工事に関わるリスク分担を明確化することで、建設費の適正化をどう実現するか。インフレリスクが懸念される建設プロジェクトから「オープンブック方式」を導入していく必要があるだろう。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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