もはや「富裕層しか建てられない」日本の住宅…欧米で普及する方式導入で価格は下がるのか

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建築物価調査会が公表している木造住宅の建築費標準指数(東京)を見ると、2015年度を100として、2020年度は106と、ほぼ横ばいで推移していたが、ウッドショックを機に急上昇し、2025年6月時点で143まで上昇した。その影響で、MSJの住宅ローンの融資も、新築より割安の中古向けが約4割を占めるようになり、新築向けでは分譲戸建ての比率が増え、注文住宅の半分が50年ローンを組んでいるという。

週刊東洋経済の2015/01/11号で、筆者は「アフォーダブル住宅」(無理なく買える手頃な価格の住宅)をテーマに記事を書いた。地価の上昇、建設費の高騰によって中間層が無理なく買える住宅の選択肢が大幅に狭まっている。インフレリスクが続くなかで、新築戸建てでアフォーダブルな住宅を実現するには従来の生産システムを抜本的に見直す必要があるだろう。

日本の木造住宅に適したBIMの研究に着手

MSJグループが住宅生産プラットフォームの構築を始めるキッカケは、10年ほど前に視察したシンガポールの住宅市場だった。すでに設計では3DのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)システムが普及し、建築確認申請でBIM審査が行われていた。同国政府関係者によると、国土面積が狭いシンガポールでは移民の受け入れに限界があり、将来を見据えて建設生産システムの合理化を図るためにBIMを導入したとの説明だった。

鵜澤氏は帰国後、日本の木造住宅に適したBIMの研究に着手した。発注者へのプレゼンテーション機能に優れ、大手ゼネコンの鹿島建設も施工BIMとして導入しているハンガリー・グラフィソフト社のArchiCAD(アーキキャド)を採用。仮想空間で住宅の組み立てをシミュレーションできる3D部品を開発し、日本の木造住宅に適応したBIMシステムを提供できる体制を整えてきた。

このBIMシステムの設計データを使って、住宅木材のプレカット加工を発注できるように、日本のプレカット工場で7割のシェアを持つネットイーグル(祖父江久好社長、福岡市西区)のプレカットCADシステムとデータ連携できるようにした。建具や収納など内装部材を供給するイビデンの子会社であるイビケン(山村範彦社長、岐阜県大垣市)とも連携し、住宅資材の電子発注システムを構築した。

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