スマートグリッドの経済学--スマートグリッドにより経常収支赤字化を回避せよ


 
 銀行の住宅貸し付け以外の貸付残高は540兆円なので(09年度末)、現状のように国債残高が毎年50兆円程度ずつ増加し、それを銀行が購入していけば、11年後には企業向け貸し出しがゼロとなって、そこで破綻する。

総じて、10年程度のうちには経常収支がマイナスになる可能性が高いといえるだろう。5年以内と予測するエコノミストもいる。そうした状況下では国債の国内消化が極めて困難となるので、海外投資家に国債を引き受けてもらわなければならなくなる。海外投資家の日本国債に対する評価が低ければ、金利は高騰し、財政が不安定となる。
 
 したがって、恒等式において、貯蓄超過が減少傾向、財政収支が大きなマイナスであることを考えると、日本が目指すべき解は、(1)減少傾向にある貿易・サービス収支黒字の赤字化要因の縮小と(2)所得収支の黒字化要因の拡大の2つということになる。

このうち、(1)の貿易・サービス収支黒字の赤字化要因の縮小に関しては、日本国内でスマートグリッドを推進し、投入されるエネルギーの3分の2を捨てる構造となっている現在の大規模・集中型システムを、小規模・分散ネットワーク型システムに転換すれば、年間20兆~30兆円にも及ぶ化石燃料の輸入代金の支払いを極力減らすことができる。

さらに、そうした小規模・分散ネットワーク型システムのコストを国内市場を活用した量産化で低下させて、当該システムをアジアなどへ輸出することにより、輸出代金の受け取りを増大させることができる。
 
 また、これらは日本の「交易条件」(輸出物価/輸入物価)を改善することにより、産出量1単位当たりの粗利益の水準を上昇させて企業収益を回復し、20年間にわたり呻吟している日本経済の苦境からの脱出を交易条件の改善という点からサポートするという効果も期待できる。

■世界から資金を呼び込むため、スマートグリッドなどの投資環境の整備を

さらに、(2)の所得収支の黒字化要因の拡大については、スマートグリッドなどの投資環境の整備を推進することが必要になる。
 
 30年以上に及ぶ貿易・サービス収支黒字の累積の結果、日本は現在250兆円もの対外純資産を保有し、第2位の中国の150兆円弱を大きく上回る世界一の対外純資産保有国だ。
 
 しかし、その資産運用は、蓄えた黒字を一方的に海外で運用するだけになっており、07年から08年にかけて債務国であるイギリスの所得収支黒字が拡大しているのに対して、債権国日本の所得収支黒字は減少している。
 
 そもそも債務国であるイギリスが所得収支黒字となるのは、経常収支の赤字を補填する以上の直接投資と証券投資を国内に呼び込み、それを基に余剰資金を海外に投資しているからだ。

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