スマートグリッドの経済学--スマートグリッドにより経常収支赤字化を回避せよ
所得収支の黒字化が経常収支の赤字化を阻止するという議論もあるが、日本の現状は、所得収支の黒字は受け取りが大きいからではなく、支払いが小さい結果、ネットで大きくなっているにすぎない。海外から日本への投資が少なく、その分、日本国内での需要拡大や雇用創出につながっていないという不健全な姿だといえる。
現状を是正し拡大均衡を図っていくためには、イギリスのように、世界から資金を呼び込んで実物投資を賄うとともに、企業や投資家が余剰資金を国内よりも収益率の高い海外の事業や資産に投資することが必要だ。
そのためには、まず、外国の投資家が魅力的だと判断する投資機会を日本国内で提供することが必要になる。対内直接投資の活発化に関しては長らく懸案とされ、いろいろな施策が行われてきたが、めぼしい成果を上げていない。
しかし、現在、電力の自由化、地域独占の見直し、「発送電分離」の検討を含めた電力市場の改革、電力再編などを含めたエネルギー構造改革が、スマートグリッドに関係して行われることになっている。これは日本の電力システム始まって以来の大改革だ。
電力事業の市場規模は、主要電力11社の売上高の合計だけで17兆2000億円(11年3月期)だが、ガス、石油などのエネルギー産業、情報通信、自動車、家電などの関連産業の市場を含めると数十兆円に達する。
このエネルギー構造改革は、日本としては避けて通れない課題であり、これを進めるときに、思い切った措置を講じてスマートグリッドの分野で魅力的な投資機会を提供すべきだろう。
また、海外でも新興国のスマートグリッドやスマートシティに巨額の投資がなされようとしており、日本の高い技術力を生かして、余剰資金をこれら事業に投資し、国内よりも高い収益率を上げなければならない。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、スマートコミュニティに関する欧米、アジアでの海外実証事業に対して支援を行っているが、その実証事業の成果を事業化に結びつけるスキームの構築が急務だ。さらに、証券投資を含めた海外投資の目利き機能を確立することも必要である。
■経常収支赤字の準備のためにもスマートグリッド&エコポイントを!
さらに、日本の経常収支が実際にマイナスになったときのことも考えておかなければならない。このときの答えは、多額の投資超過の状況をつくることだ。経常収支が赤字のときは、「貯蓄超過+財政収支」がマイナスとなるので、巨額の財政収支の赤字の下では、貯蓄超過がマイナスで、しかもその絶対値が大きいことが必要となる。すなわち多額の投資超過が必要となるわけだ。