「目」や「経験」に頼る医師はもういらない?――AI搭載で便座や洗面台、マットレスが"病気の徴候"を見つける時代に

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

放射線科と並び、皮膚科はAI診断技術がすでに成熟した分野となりました。名医の「目」や「経験」に頼る時代は終わりを迎えつつあり、「AIが診て、人間が決める」という役割分担が、すでに医療の前提となっているのです。

また、超高解像度医療用ホログラフィック画像診断技術も、医療画像データの質を根本から変えるものとして、2024年から一部の先進的な研究機関で実証実験や限定的な応用が始まっています。

この技術は、従来のCTやMRIで取得された3Dデータをより直感的で高精細なホログラフィック技術を用いて可視化し、病変の把握を飛躍的に向上させるものです。従来の表示法では捉えきれなかった異常が詳細に把握できるようになり、微細構造まで確認できます。

高精細な3Dデータ理解は、二次的にAIの学習に大きな利点を提供します。微細な構造変化をAIが学習することで、早期の疾患検出が可能になるかもしれません。

便座や鏡で生体データを収集

こうした医学の発展に寄与するビッグデータを収集する場は、病院やクリニックの診察室とは限りません。

たとえば、デバイスを通じたビッグデータ収集も考えられます。特に睡眠デバイスは有望です。

睡眠のデータはスマホやスマートウォッチでも収集可能ですが、近年は肌に密着して詳細な生体データを集めることができ、睡眠中の邪魔にもならないスマートリングが普及し始めています。

フィンランド発のOura Ringは2024年6月には販売数が250万個を突破するなど世界を席巻しました(私も持っています)。

ほかにも、寝具の下に敷くタイプのセンサーや、マットレス自体がセンサーになっている「スマート睡眠パッド」も発売されています。これらのデバイスを介してユーザーの睡眠の質を示すデータに直接アクセスし、メンタルヘルスなどに直結するアウトカムが今後得られるでしょう。

住宅設備機器メーカー大手のTOTOは、2021年1月に世界最大規模のデジタル技術見本市であるCESで、便座に内蔵されたセンサーから排泄物の状態に関するデータのほか、トイレの便座と皮膚が接する際に得られる血流データなどの生体情報を収集する「ウェルネストイレ」を開発すると表明し、注目を集めました。

発表時点ではまだコンセプト段階で、海外の研究機関などとの協業で実用化を進めたいとのことでしたが、実用化され、トイレから膨大なデータが集まれば、医学界と健康産業にとっては「宝の山」になる可能性があります。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事