「目」や「経験」に頼る医師はもういらない?――AI搭載で便座や洗面台、マットレスが"病気の徴候"を見つける時代に

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

同じく2023年にはベトナムのVinBrainが開発したDrAidが、肝臓がんや肺がんの微小病変を高精度に検出できる能力を実証し、翌2024年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)認証を東南アジアのAI医療ソフトとして初取得。ASEANデジタルアワードで医療分野優秀賞を受賞して国際的評価を高めました。

2024年には、アメリカのNorthwell HealthがiNavシステムを用いて、MRIやCTの過去画像から無関係と思われたスキャンをAIで解析して膵臓がんを早期発見。診断から治療開始までの時間を50%短縮し、AI活用の臨床的インパクトを鮮明に示しました。

がん検査の1つに、がんが体内に発生すると血液や尿のなかに増える特定の物質(腫瘍マーカー)の量を測定することでがんの有無を診断する「腫瘍マーカー検査」があります。この検査は比較的気軽にできるものの、早期ステージにおいては値が高くなりにくい傾向があるため、がんの早期発見にはあまり役立ちません。

しかし、過去のがん患者の膨大な血液検査結果をビッグデータとして活用し、AIに解析させることで、(たとえばですが)コレステロール値や血糖値など、通常は腫瘍と関係があるとは思われないようなありふれた検査項目の微妙な動きとがんとの関連が発見されていく可能性があります。

それを見越して、実際に研究が進められているのです。

AIが診て、人間が決める

こうした「医療データサイエンス」の学問分野には現在、大いに注目が集まっています。

順天堂大学が2023年4月に健康データサイエンス学部、千葉大学が2024年4月に情報・データサイエンス学部を開設するなど、各地の大学が医学部とあわせて、データサイエンスを専門的に研究する学部や学科を立ち上げつつあります。

皮膚科領域では、AIによるがん診断が医療技術的にはすでに一線を越えています。2024年には、病変の画像から悪性黒色腫などを検出するAIが実地試験に投入され、医師の診断精度を着実に高めることが確認されました。

2025年には、イギリスのSkin Analyticsが開発した診断AI「DERM」が、がんの可能性の大小を自分でさっさと見分けてしまうシステムとしてヨーロッパで正式認可され、実際の医療機関における運用も始まっています。

特筆すべきは、これらのAIが診断結果だけでなく、「ここの境界の不規則性」や「色素沈着のパターン」など、判断の根拠を視覚的に提示できる点です。医師はそれを参照しながら、より精密で迅速な判断を下すことができるのです。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事