医学界や患者会が「がん登録」の法制化要望、超党派で法案提出も
超党派の国会議員で構成する「国会がん患者と家族の会」(代表世話人:尾辻秀久参議院議員=元厚生労働相)は4月12日、参議院議員会館内で「がん登録」のあり方を議論する集会を開催した。4月から始まった新たな「がん対策推進基本計画」(2012~16年度)の最重要課題として、がん登録を法制化する必要性について大筋で認識が一致した。
現在、患者情報の詳細をデータベース化するがん登録(院内がん登録および地域がん登録)は健康増進法で国および都道府県の努力義務とされているが、現在も未実施の都県が存在するうえ、2009年時点で全国のがん患者の約6割しかカバーしていない。
そのため、全国や地域ごとの正確な罹患状況が把握できておらず、がんの罹患数や罹患率自体を推計に頼っているのが実情。患者数の少ない希少がんや小児がんでは正確な把握自体が困難になっている。
会合には、衆参両院の国会議員のみならず、日本医学会の高久史麿会長や門田守人副会長(厚生労働省がん対策推進協議会会長)、10以上のがん患者団体の代表らが参加。「5年生存率が推計値にすぎないというのはどういうことか」(山崎まや衆議院議員=民主党)、「がん登録の必要性では皆が一致しているのに、このような状況が続いている理由を見極めないといけない」(柿沢未途衆議院議員=みんなの党)といった意見が相次いだ。
がん登録推進のうえでのネックとして指摘されたのが、個人情報の壁だ。厚労省の鷲見学・がん対策推進官によれば、「治療を受けていた県から別の県に住所を移した後に死亡した場合などで、個人情報把握の問題が生じている。個人をきちんと追いかける体制が整っていないため、5年生存率はわずか6府県のデータを元に推計しているのが実情」。また、がん登録は45道府県で実施されているものの、「全数把握ができていないため、希少がんや小児がんの抽出ができていない」(同氏)という。
厚労省によれば、先行する欧米諸国や韓国では、医療機関に報告義務を課したり、行政当局に報告権限を付与している。韓国の場合、06年の「がん管理法」改正時にがん登録事業を統計法に準じる事業とし、個人情報保護法の適用除外とした。これに対して日本では法的義務がないのが実情だ。