記事へのただ乗り「民主主義の根幹揺るがす」…米パープレキシティを報道機関が相次ぎ提訴
米国の生成AI(人工知能)事業者に対し、日本国内の大手報道機関が相次いで訴訟を提起している。その背景には、膨大な労力と費用をかけて生み出した記事への「ただ乗り」を放置すれば、報道機関のみならず、民主主義の行く末に大きな影響を及ぼしかねないとの強い危機感がある。
「新聞社のビジネスモデルを破壊し、ひいては民主主義の根幹を揺るがす」。日本経済新聞社と朝日新聞社は26日、米パープレキシティに対する訴状の要旨を公開し、こう訴えた。

報道機関では、記者が災害や事件・事故などの現場に赴き、様々な人に話を聞いて記事を作成している。編集や校閲の過程でチェックを重ねた上で、新聞紙面やニュースサイトに掲載し、購読料や広告料などの収入でコストを賄う。
生成AI事業者は、こうして世に出た記事をウェブ上で集め、生成AIサービスの利用者に回答するための学習に利用。報道機関による事実確認がされた記事は良質な回答を生むための「情報源」となるが、事業者は報道機関の同意を得ず、対価も支払わずに記事を使い続けているとして、日本新聞協会は繰り返し改善を求める声明を出している。
今回、提訴されたパープレキシティが展開するのは、ウェブ上の検索に対し生成AIが回答する「検索連動型」のサービスだ。7日に同社を提訴した読売新聞社は訴状で、このサービスでは利用者の質問に対し、従来の検索サイトのようなリンクを表示するだけでなく、関連記事の要約を示すことから、利用者が参照元のニュースサイトを訪れない「ゼロクリックサーチ」の弊害が顕著だと強調。著作権侵害だけでなく、営業上の利益を脅かす民法上の不法行為にもあたると訴えた。