《YouTubeチャンネル登録者数32万人超》ピアニスト・石井琢磨が切り拓くクラシック界の「新時代」。最初の動画は再生回数わずか14回だった

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「当時、ウィーンでも新型コロナの流行が始まり、コンサート活動が中止になってしまいました。ピンチをチャンスに変えたくて、YouTubeを始めました。

新しいことに挑戦するときは誰しも怖いものだと思います。僕もすごく怖かった。どう評価されるのか分からなかったし、当時のクラシック界は今よりも閉じていたので、YouTubeをやることをどう見られるか不安もありました。

でも実際に始めてみると、不安を吹き飛ばすほど喜んでくださる方の声が多かった。自分がいかに狭い世界で生きていたのかを思い知らされましたし、クラシックは多くの人に愛される音楽なんだと改めて実感することができました」

チャンネルの転機になったのは「カフェピアノ突撃企画」。ウィーンの老舗カフェで食事をした石井さんが、店員に「今からピアノを弾かせてください」と体当たりで交渉する人気企画だ。

YouTubeのカフェ突撃企画
人気のきっかけになった「カフェピアノ突撃企画」(画像:YouTubeチャンネル「TAKU-音 TV たくおん」より)

交渉の緊張感や、演奏する石井さんの楽しそうな様子が多くの反響を集めた。カフェで演奏するとき、石井さんはコンサートホールとは違う工夫をしているという。

「コンサートホールとカフェは響きが全く違うので、音量を大きめにして、遠くの人にも届くように演奏します。少し大袈裟なフレーズをとることもありますね。

また、カフェのお客様は必ずしもピアノを聴きに来ているわけではないので、穏やかでマイルドな選曲を心がけています。ただ、場所がどこであっても『最高の演奏を届けたい』という気持ちは変わりません」

人を巻き込むことでチャンスが拡大

クラシックとYouTubeの関係は、この数年で大きく変化していると石井さんは語る。

石井琢磨さん
(撮影:谷川真紀子)

「YouTubeが登場したとき、クラシック界には戸惑いがありました。音楽がすべてオンライン化して、生の演奏会が衰退するのではないかと危惧されていたんです。

けれど最近は、逆にYouTubeによってクラシック界が活性化していると感じます。僕のチャンネルをきっかけにクラシックを好きになってくれた方も増えましたし、業界の人たちもYouTubeを連動させることで新しい客層に届くことに気づいています」

YouTubeを始めたことで、自分自身にも大きな変化があったという。

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