《YouTubeチャンネル登録者数32万人超》ピアニスト・石井琢磨が切り拓くクラシック界の「新時代」。最初の動画は再生回数わずか14回だった
また、ビジネスパーソンなど忙しい毎日を送る人にこそ、「クラシック音楽に耳を傾けてほしい」とも語る。
「現代社会は音が多すぎると思います。そんな環境では、なかなかいいアイディアが浮かびません。僕自身、ウィーンではよく森林浴や美術館に行きますし、東京にいるときはプールに行って水の音だけに包まれるようにしています」
静かな環境でクラシックを聴くのは、森林浴で小鳥のさえずりに耳を澄ませたり、海辺で波の音を聞いたりするのと同じように精神的にリフレッシュできる効果があるという。
「音響学を学んだときに知ったのですが、クラシックは、聴いているときにアルファ波(リラックス時に出る脳波)が出やすい音楽なんです。低音が少なく、ビートを刻んでいないので、落ち着けるのです。
ビートが強い音楽だと気持ちが焦ったり興奮したりしますが、ゆったりとしたテンポなら心拍数が曲のリズムに同調して心が整っていきます。
さらにクラシックはリズムに揺らぎがあるので、リラックス効果が高まります。バッハの『G線上のアリア』や、モーツァルトの交響曲第41番『ジュピター』など、癒されると思いますよ」

クラシック初心者のなかには「コンサートで眠ってしまうかも」と心配する人も。しかし石井さんは「寝てくださるのはむしろいいこと」と笑顔を見せる。
「眠れるほど気持ちのいい音楽ということですから、全く問題ありません。渋谷の『Hakuju Hall』ではリクライニングシートを導入し、寝そべりながら楽しめる『リクライニング・コンサート』が行われています。
ただ、本当に心を揺さぶられるコンサートで眠ることはできないので、ぜひそういうコンサートに巡り合っていただきたいと思います」
YouTubeで広がるクラシックの可能性
石井さんの『TAKU-音 TV たくおん』は、今年開設5周年を迎えた。「最初の動画は再生回数14回。そのうち9回が家族でした(笑)」と振り返るが、現在では登録者数32万人以上、総再生回数が1億回を突破する人気チャンネルに。YouTubeを始めたきっかけは、コロナ禍だった。

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