電力全面自由化、「市場の番人」の役割とは? 電力取引監視等委・八田達夫委員長に聞く

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しかし、費用がかかっても開示したいという事業者がいるならば、その開示情報が正しいことを公的に保証する必要があるだろう。さらに、有機野菜などと同じで、事業者が「有機野菜だ」と自称しても、本当に正しい基準に基づいていなければ、消費者がだまされることになる。

したがって、開示情報の基準をつくることと、それが正しいことをチェックして保証することが行政の役割であることは明らかだ。

発送電分離の中立性担保も重要テーマ

――2020年までに実施される発送電分離について、日本では法的分離の方向ですが、送電網の中立性や競争促進の観点からどう考えていますか。

形は法的分離による発送電分離だが、中身をどうするかによって中立性がどこまで担保されるかが変わってくる。非常に中立性を担保しているのはフランスのやり方だ。同国も法的分離だが、子会社である送電部門の社長は発電部門が選ぶのではなく、首相が選ぶ。だから人事権が独立しているし、部門間の人事交流も「ノーリターンルール」などで非常に制限されている。

送電部門が中立であることは極めて重要だ。たとえば、どこに送電線を引くかという情報をどこか特定の発電会社が知っていれば、その近くに先行投資することで有利な立場に立ってしまう。そういう情報が漏れないようにしなければならない。法的分離なので送電部門と資本はつながっているが、事実上、別会社として情報が遮断されている必要がある。フランスはその点、徹底されている。

日本も今後、法的分離の下で中立性を担保するために具体的にどうするかを考えていかねばならない。この委員会の大きなテーマだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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