電力全面自由化、「市場の番人」の役割とは? 電力取引監視等委・八田達夫委員長に聞く

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こうした大改革によって、電力市場の競争が拡大すれば、これまで以上にルールを守ってもらう必要がある。それを監視するのが、われわれ委員会の役割の一つだ。大手電力会社が独占的行為をしてはいないか、中小の新規事業者が需要家に迷惑をかけていないか、といったことを監視する。

もう一つの重要な役割は、新しいルールの詳細を決めていくことだ。新たな制度の大枠はできたが、詳細についてはこの委員会で審議して、経済産業大臣に建議する。電力取引監視等委員会という名前に「等」が入っているのはそのためだ。

――この委員会は経産大臣の直属組織ですが、独立性や透明性はどうなっていますか。

この委員会で審議して建議した内容を、経産大臣がそのまま呑む必要はない。政治的責任の下に大臣が修正することもありうる。とはいえ、委員会での審議は中立的な委員によって中立的判断を基に行われており、国民にオープンにされる。それが重要だ。

東日本大震災前のように、電力会社の幹部や労働組合などの利害関係者が中心になって議論したり、役所の中で閉鎖的に審議したりするのとはまったく違う。もちろん、利害関係者の話もオブザーバーとして聞く必要はある。一部の個人情報や企業機密、抜き打ち監査の手法や時期など、クローズにすべきところもあるが、原則はオープンだ。

価格操作や消費者対応などを厳重に監視

――監視する不正行為とは具体的にどういったものを想定していますか。

たとえば、大手電力会社などが独占的地位を利用し、市場の価格操作をするために異常な値動きをさせるようではまずい。大きな発電能力を持っていれば、発電を意図的に止めるだけで価格が急騰するかもしれない。顧客に対して、いったん契約を解除したらもう元には戻せない、と言って他社への契約切り替えを抑え込むような行為も問題だ。

また、消費者への契約条件の説明義務をしっかり果たしているかどうか。消費者の苦情を無視するというのもまずい。委員会に苦情が来れば、場合によっては事業者への立ち入り検査も行う。業務改善や業務停止などの勧告を行う可能性もある。

――監視体制は十分ですか。

この委員会(経産省内)だけではなく、地方の経済産業局でもちゃんと人数を確保しており問題はない。

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