電力全面自由化、「市場の番人」の役割とは? 電力取引監視等委・八田達夫委員長に聞く

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――2016年4月からの電力小売り全面自由化後に家庭向けを含めて小売りを行う「登録小売電気事業者」の第一弾として、10月8日に40社が登録されました。今後も数多くの登録申請の審査が続くと見られますが、審査で重視している点は何ですか。

過去に不正を行っていないか、反社会的勢力との関係はないかなどがチェックのポイントとなる。また、消費者からの問い合わせや苦情への対応など、消費者保護の体制が十分に整っているかどうかも重要だ。

――現在審議中の託送料金(送電網の使用料)の適正さについてはどう考えていますか。大手電力が申請した託送料金では高すぎて、新電力の値引き余地があまりないとの懸念も聞かれます。

(送電網の)利用者から見て高すぎる、低すぎるという問題よりも、決められた今の基準で厳正に判断して、できるだけ抑制したいと考えている。いま実際、審議中だが、託送料金を決めるうえでの基準作りで工夫している。

たとえば、電力会社には支店や支所がいっぱいある。支店や支所では送配電線の保守や管理だけでなく、営業も行っている。そのため、各支店、各支所において送配電にどれだけの費用がかかっているかを割り出さなければいけない。それが託送料金にはね返ってくる。

これまではその費用分割の基準に電力会社の間で統一性がなかった。今回、当委員会で統一的なルールをつくって、送配電のための託送料金を決めていくことになる。

電源構成の開示には公的な保証が必要

――全面自由化後の制度設計に関しては、電源構成の開示義務のあり方についても委員会で議論しています。自分が使っている電気が、火力や原子力、再生可能エネルギーなど、どんな構成比になっているのか知りたい利用者は多いはず。消費者団体からも開示を求める声が強い。一部の欧米諸国では実際に行われていますが、どのように考えていますか。

いま、いろいろな関係者の意見を聞きながら審議している。原子力発電については、どこの電力会社が使っていて、使っていないかは明らかだ。

むしろ、再生可能エネルギーだけでやっているのか、本当に自前の電気だけか、(いろいろな電源が混じった形の)取引所の電気を使っているのか、といったことをちゃんと見なければならない。昼間は自前の太陽光で発電しているが、夜は大手電力から供給を受けるといった場合に、どうやって割合を計算するかなどかなり複雑な基準が必要だ。そのために、カネがかかっても強制して全部出させるべきか、望むところだけに限定するのかが論点となる。

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